桜なんか咲かなければいいのに…? I wish cherry blossomes didn't bloom in spring.


4月2日は「友の会」で「花見」を楽しみました。3月に入ると、今年の開花予想が気になりはじめ、当日は満開であればいいなあとか、いい場所がとれるかなとか、長期の天気予報を気にしなが過ごしていました。そして当日、ちょうど満開でしたが、あいにく曇っていて気温が低く絶好の花見日和ではありませんでした。そんななか、教室とは違ったリラックスした和やかな雰囲気で楽しい時間をすごすことができました。自己紹介で初めて顔・名前を見知った人もいました。Tさんの音頭で「むすんでひいて」をみんなで歌っていっそう盛り上がったりもしました。



「花見」というとこんな歌が思い浮かびます。
   世の中に たえて桜の なかりせば 春の心は のどけからまし

今から1100年以上前に編まれた『古今和歌集』の一首です。この歌集(詩集)には天皇・皇族・貴族たちをはじめ、名もない庶民、男女の区別をせず数多くの歌が採られている、世界でもまれなものです。先の歌、現代語にすると「この世の中にまったく桜というものがなかったら、春の気分はどんなにかのんびりしたものだろうに」ということです。春になると桜が咲くので心落ち着かない。一見、「桜なんて咲かなければいいのに」と言っているように思えるし、なんだか理屈っぽくて、何を言いたいのか分かりにくい歌だともいえます。
 春になると、今年はいつ開花するのかいつ開花するのかと心待たれ、咲き始めたらじっとしていられず、雨が降ったり強い風が吹くと落花するのではと夜も寝付けず、満開になると居ても立ってもいられない。やがて桜吹雪となってその美しさに感嘆すると同時に、名残惜しく切ない気持ちをおさえることができない…いっそ桜なんか咲かなければいいのにと思う…桜をこの上もなく愛好する気持ちを逆説的に詩(歌)にしたものです。

花見の後、堰堤を散策。曇り空のため絹の帳ごしのように見える湖畔の風景、直下の桜とその奥のほうに見える町並みなど、この場所でこの日の時間にしか目にすることができないといえる風景、贅沢と言っていい時間を過ごすこともできました。
また一つ記憶に残る「花見」ができました。

~さくらさくら 三月の空は みわたすかぎり

   かすみか雲か 見にゆかん~



【日本語教室外国人対象会報に掲載 原文はルビつき】




コメント