小説~筋トレ国語式勉強法


小説はどう読み進めればいいのか?

  小説をしっかり読めている人は、次に述べることを意識的にか無意識のうちにできている人と言えます。

 

 文章を読むという意味では、繰り返される語句・同内容の別表現に着目する、指示語や比喩表現を正確にとらえる、二項対立に着目するなど、評論の読解の方法と同じですので、参考にしてみてください。さらに、小説を読む場合は別の視点・観点が必要とされます。


【小説を読む時、欠かせない視点・観点とは?】

 「主人公や登場人物の心情・心理、または、そういう気持ちになった理由についてが主なものになります。
 それを、文章にある 根拠にもとづいて、正確に読み取る こととなります。
 


4つ観点

 登場人物の心情・心理を的確に読み取るには、根拠となる次の4つ観点に気をつけて読むようにします。
① いつ
② どこで
③ 誰が
④ どうした

 

「羅生門」を四つの観点からとらえる

 ここでは、多くの高1の教科書でとられる芥川龍之介「羅生門」を例にします。

 この小説は、「ある日の暮れ方のことである。一人の下人が、羅生門の下で雨やみを待っていた。」で書き始められます。

 つまり、この小説では、
① いつ   ⇒ 「ある日の暮れ方」
② どこで  ⇒ 「羅生門の下」
③ 誰が   ⇒ 「一人の下人」
④ どうした ⇒ 「雨やみを待っていた」
と、4つが冒頭に端的に書かれているわけです。『羅生門』が小説を書くマニュアル通りに書かれているともいわれている所以(ゆえん)の一つです。


 さらに読み進めると、次のようにさらに詳しく書かれていきます。

① いつ   ⇒ 平安時代末で、天災や大火事などが打ち続き、都は荒廃し、不作のため食べ物が欠乏して人々は飢え苦しみ、仏も畏れないほど人心はすさみきっていた時代。

② どこで  ⇒ 羅生門は大都を南北に貫く朱雀大路の入り口にあるにもかかわらず、今は荒れ果てて人気もなく、死体が捨てられるような不気味な場所となっている。

③ 誰が   ⇒ 「洗いざらした紺の襖」「右の頬にできた、大きなにきび」「永年、使われていた主人から、暇を出された」と、身なりに気を使い、仕事熱心でまじめな人柄であり、幼年から奉公(召し使われてはたらくこと)した先から「暇を出された(解雇された)」ばかりの青年。

④ どうした ⇒ 「何をおいても差し当たり明日の暮らしをどうにかしようとして」『手段を選んでいるいとまはない。…「盗人になるよりほかにしかたがない。」ということを、積極的に肯定するだけの、勇気が出ずにいた』とある。どんな仕事であっても稼がなければ野たれ死にするしかない切羽詰まった境遇にある。そうであるのならば強盗をするしかないとわかっているが、そんなふうには開き直れない。正義心を捨てきれない。



 ここで気をつけたいのが、小説を読んでいる 現在の自分を絶対視しない ことです。この小説で語られている、天災や大火や飢饉や疫病に見舞われた平安末という時代と荒廃した都、仏罰も畏れないほどすさんだ人心、死体が捨てて行かれるような不気味な羅生門のようす、「下人」の見た目やこのままでは飢えて死ぬしかない追い詰められた境遇、社会の最底辺でその日その日の命をつないでいる老婆などを虚心に受け入れ、 自分もその世界に入り込み物語の現実を追体験してみる ということです。そのためにも正確で深い読みが必要なのです。

 現在の社会や現実をいつでもどこでも誰にも変わらない、当たり前のこととしてこの小説にあてはめて読んでも、「下人」と「老婆」の心理も行動も理解不能になります。また、この小説が何を語ろうとしているのかも理解できないことになるのです。

 

【心情心理を読み取る】

 この「下人」は夜を明かそうと羅生門の上の階へ上っていき、死骸の髪の毛を抜いている老婆を目にするのである。特に、ここから、「下人」の心理を正確に読み取る必要があります。

 「下人」は、「この雨の夜に、この羅生門の上で、死人の髪の毛を抜く」老婆を見たことから、「それだけですでに許すべからざる悪」と「激しい憎悪」「反感」が燃え上がったこと(=心理)から老婆を懲らしめようとして襲い掛かる。この「下人」の心理は、 青年期特有のナイーブで衝動的かつ感傷的な正義心 から来るものとされていますが、老婆の行為と青年の心理は ①②③④を背景にしている ことが分かってくるように書かれているのです。

 このように、①②③④を背景として、結末の「下人は、はぎとった檜皮色の着物をわきにかかえて、またたく間に急なはしごを夜の底へかけ下りた。」とあります。 どんな悪を犯したって生き抜くのだ ! という決意と信念 を持つという結末に至る「下人」の心情心理とその変化を読み取っていきます。
 


【「羅生門」のテーマは何か】

 小説にはテーマがあるということを知っておきましょう。つまり、ある問題が設定され、それへの 作者の考えや結論 が示唆(しさ)されています。
 たとえば、中学校で取り上げられることが多い『走れメロス』では、「どんな困難であってもあきらめないこと」や「友情の大切さ」や「人を信じることの大切さ」が示唆されているといえます。それがテーマになるのです。

 「羅生門」では、平安末の極限の現実で生きる「下人」と「老婆」を設定して、 《生きることとエゴイズム》の問題に解答を与えようとしている のです。その解答がテーマとなります。
 ただし、多くの小説で、中学校で読んだ「小説」のように、 人生の教訓や励ましのようなものを期待しても当てが外れる ことが多く、さらに、そのような読み方が、 その小説自体を読み違える ことになってしまうことも知っていた方がよいでしょう。この「羅生門」のテーマを考える際も同じことがいえます。




【アドバイス】
 小説においても、試験問題で問われていることを漫然と感覚的に読み解いていくのではなく、 文章中に上記の①~④のような根拠にもとづいて解答を導き出す ことが大切です。そんな読み方と考え方を習慣づければ、的確に読み取れ、さらに、正解を導けるようになります。



 最後に、小説は試験問題作成のため書かれているのではないことは言うまでもありません。小説は楽しむものです。小説を読みながら、今とは違う時代やこことは異なる現実や自分ではない人物を生きたり、小説世界でしか体験できない体験をしたりして、 思考や感覚を覚醒されたり触発されることが小説を読む楽しみの一つと言えるでしょう。そんな体験が 人間や世界を見る視力・視野をレベル・アップさせるのです。小説の試験問題を解き考えるのは、小説を読み楽しむスキルアップも兼ねていると思って取り組めばいいのではないでしょうか。
 Let's try!



 

 「羅生門」前編 テスト問題にリンクできます。


 「羅生門」後編テスト問題にリンクできます。


評論~筋トレ国語式勉強法にリンクできます。



                   


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