あらすじ
三月ころのうららかな日、六条院に蛍兵部卿(ほたるひょうぶきょう)や柏木(かしわぎ)が訪ねてきた。暇を持て余していた光源氏は、子息の夕霧も呼んで、寝殿の東面(ひがしおもて)で蹴鞠(けまり)をさせた。
若い人たちは身分も忘れて蹴鞠に打ち興じた。落ち着いた遊びではないが、桜の木の下で、優雅であった。なかでも柏木はわざもすぐれ、容姿も美しかった。(蛍兵部卿の)宮も源氏と一緒に眺めている。
蹴鞠(けまり)の回数が進むにつれ、高位の人も乱れて熱中する。夕霧も夕日の光の中で一段と美しく、やがて、桜の枝を折って階段の中ほどに腰を下ろした。柏木も後に続いて、夕霧と話しながら、女三宮の部屋の方をそっと見ると、蹴鞠のさまを見ていると思われる女房たちの衣裳がこぼれでている御簾(みす)の端(はし)や、透影(すきかげ)が美しい。
源氏が犯した罪
光源氏の母桐壺の更衣は、源氏が袴着の儀式行う三歳の年に世を去ってしまう。後宮にはその後、故桐壺の更衣に生き写しの、先帝の四宮が入内して藤壺女御となり、帝もようやく満足する。世の人々はその美貌を称賛して、藤壺をかがやく日の宮、源氏を光君と称したことはすでにみた(こちらを)。源氏は次第に、この父帝の正室であり義母である藤壺を女性として慕うようになり、のちに若紫巻で王命婦(おうのみょうぶ)の手引きで藤壺に近づき、藤壺は懐妊し、源氏も夢占いでこの事実を悟る。
犯した罪の報いとなる端緒に導いていく
ここでの舞台は源氏が築いた大邸宅六条院。源氏は太上天皇に準じる位になり、何の勤務もない日が続く。また、この世はよくおさまっている。
柏木は女三宮を、源氏への降下(皇族の娘が臣下にとつぐこと。ここでは源氏の正室となること。)以前から慕い、降下後も、源氏が出家するようなことがあったら……などと思い続けていた。
若い人たちの蹴鞠を、「寝殿の東面」に招きよせたのは源氏であった。このことが、かねてから女三宮(源氏の正室)に思いを寄せる柏木に、女三宮を垣間(かいま)見させる機会を与え、その後の事件のひきがねとなることとなる。
私も若かったらやりたかった、だから、君たちも遠慮しないでやりなさいと勧める一方、とはいっても、やりすぎるとみっともないよということ。
(「さるは」とは、トハイウモノノ、直前の「かばかりの齢にては、あやしく見過ぐす、口惜しくおぼえしわざなり」を受ける。)
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