かぐや姫、月へ
(竹取物語)
~物語の型(パターン)と宗教性について
「竹取物語」~古代物語の世界
「竹取物語」は、我が国で初めて書かれたとされる物語。今から1120年ほど前のことです。漢字をもとに発明されたひらがなで書かれています。文字で書き残されたから、現在でも私たちが読むことができるわけです。
当時伝承されていたいくつものお話を素材にして、かぐや姫の出生から始まり、五人の貴公子のプロポーズ、帝の召(め)しに応じず月の都に帰っていく物語として書かれています。複数の伝承を咀嚼(そしゃく)解釈し独自の表現で構成していくという、才能あるストリー・テラーの存在なくしては書かれなかった作品といえます。
物語の型と宗教性について
竹取の翁(おきな)が、竹の中に発見した女児を連れ帰り妻の嫗(おうな)と自分たちの子供として大切に育てました。その後、竹の中に金(こがね)を見つける日が続き、翁夫婦は豊かになっていきました。翁が見つけた子供はどんどん大きくなり、三ヶ月ほどでこの世のものとは思えないほどの美しい娘になり、かぐや姫とよばれました。竹中生誕説話(ちくちゅうせいたんせつわ)や至富長者説話(しふちょうじゃせつわ)の型に拠ったともいわれます。
〈竹〉(こちらから画像を)は釣り竿・ざる・垣根・杖など日常に汎用(ハンヨウ〉されてきたもの、かつ、他の樹木とは違って中に空洞があったり、生育が著しく早かったり、神が憑依(ひょうい)するものであったりして、霊性あるのもとして神聖視されていたようです。現在も、七夕(たなばた)や神社のお祭りなどの神事で使用されていますよね。
そのかぐや姫は、実は月の世界という異郷の人で、期限が来たら帰らなければならないという宿命にあると告白します。
月の世界はどういう所か、そこにいる天人とはどういう人たちなのか、月とこの地球をどうやって行き来するのか、1100年前の人々は興味深く読んだでしょう。
かぐや姫の生い立ちに始まり昇天に至るまでには、5人の貴公子が求婚しますが、かぐや姫は難題を与えて退ける話が展開されています。求婚難題説話(きゅうこんなんだいせつわ)に拠ったと言われています。最後は帝からの求婚という帝求婚説話の型になっていると言えますが、この物語では帝からの求婚を拒否し、地上権に対する天上権の優位の思想を語ることになっています。
その他にも影響を与えたと考えられる説話の型があげられていますが、そもそも、物語全体の枠組みが、かぐや姫という貴種が地上に来て、最後に清浄な世界に戻っていく、貴種流離譚(こちらを)の型であるともいわれています。
多くの物語の類型(こちらを)に拠ったにしろ、それらの単なる継ぎはぎではなく、様々な地位・境遇・個性を持つ人物を登場させ、発端から結末までを 物語の現実として言葉という形あるものに形象化し表現していったのです。この後の物語文学の嚆矢(コウシ・さきがけ〉となるものです。
作者は上流貴族の男性だと考えられていますが、特定されていません。超凡の才能であると考えるべきでしょう。
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