韓信
『史記』
~国史無双、劉邦の覇権を
決定づけた戦略家
【前編】
亭長の家を出る
布さらし女の好意
ある時は、韓信が町はずれで釣りをしていた。そこで年配の女性たちが、布を水で洗ってさらしていた。ひとりの女が、おなかをすかせている韓信を見て、ご飯を食べさせた。布をさらす仕事は、終わるまで数十日かかった。韓信は喜び、その布さらし女にこう言った。韓信の股くぐり
淮陰の屠殺場で働く若者に韓信をあざける者がいて、こう言った。韓信の青年期
韓信は劉邦に仕えて大将軍(総指揮官)となり、楚漢の抗争で勝敗を決定する重要な役割をはたした武将です。卓越した作戦能力を持ち、戦えば常に勝利をおさめ、『国士無双(=比べられる者がいないほど優れた者)』と呼ばれるにふさわしい人物でした。
しかし劉邦が天下を統一して漢の皇帝となってからは、その能力と領土の大きさから警戒されるようになり、最後は謀反(むほん)を企てるものの、失敗して処刑されてしまいました。漢族に人気の歴史上の人物のです。
この前編は、その韓信の若いころのエピソードが語られている箇所です。韓信は若いころから貧乏で人に寄食していたが、待遇が悪いと怒って飛び出すような自尊心の強い人だったとされています。また、木綿を晒(さら)す仕事をしている貧しいおかみさんの世話になっていた時、おかみさんに、そのうちたっぷりお礼をするよと言って、甲斐性なしが何を言っているのだとバカにされたり、町のならず者に言いがかりをつけられてその股をくぐり笑いものになった(「韓信の股くぐり(こちらへ)」と言われています。)など、若い頃から並外れて自尊心が強く、遠大な野心を持ち、一方愚かな争いなどにはかかわらないというような人物として司馬遷は語っているようです。
「韓信1」の原文/書き下し文/現代語訳はこちらへ。
この前編に続く後編(こちらを)で、劉邦は蕭何(しょうか)の推薦を受けて無名の韓信を抜擢(ばってき)して大将軍の地位を与えます。韓信は劉邦に敵項羽攻略の戦略を授けます。こうして劉邦が項羽との戦争で勝利するために重要な役割を果たすこととなります。
『史記』とは
前漢の司馬遷によって書かれた史伝。紀元前90ころ成立。
宮廷に保存されていた資料や古くから伝わる文献や司馬遷自身が各地の古老から聞き取った話などをもとにして書かれたとされています。
帝王の記録である本紀(ほんぎ)、著名な個人の記録である列伝などから構成される紀伝体(きでんたい)と呼ばれるもので、司馬遷が創始した形式です。以降各王朝の正史の形式となりました。
『史記』の最大の特色は、単なる事実の集積ではなく、個人の生き方を凝視した人間中心の歴史書であるという点にあります。歴代の治乱興亡の厳しい現実の中を生きた多くの個性的な人々の躍動感あふれる描写と場面転換のおもしろさなどから、文学作品としてもながく読まれてきています。
今から2000年以上前、これほどの史書が書かれていたことに驚かされます。その頃はわが国は弥生時代であり、また、万葉仮名で書かれた我が国初めての歌集『万葉集』の編纂が完成する約850年も前に書かれたことになります。
韓信とは
韓信(かんしん)は劉邦(りゅうほう)に仕えて大将軍(総指揮官)となり、楚漢の抗争で勝敗を決定する重要な役割をはたした武将です。卓越した作戦能力を持ち、戦えば常に勝利をおさめ、『国士無双(=比べられる者がいないほど優れた者)』と呼ばれるにふさわしい人物でした。
しかし劉邦が天下を統一して漢の皇帝となってからは、その能力と領土の大きさから警戒されるようになり、最後は謀反(むほん)を企てるものの、失敗して処刑されてしまいました。漢族に人気の歴史上の人物のです。HP「韓信1/2」(こちらへ)は、その韓信の若いころのエピソードが語られている箇所です。韓信は若いころから貧乏で人に寄食していたが、待遇が悪いと怒って飛び出すような自尊心の強い人だったとされています。また、木綿を晒(さら)している貧しいおかみさんの世話になっていた時、おかみさんに、そのうちたっぷりお礼をするよと言って、甲斐性なしが何を言っているのだとバカにされたり、町のならず者に言いがかりをつけられてその股をくぐり笑いものになった(「韓信の股くぐり(こちらへ)」と言われています。)など、若い頃から自尊心が強く、高い野心を持ち、愚かな争いはしないというような人物として司馬遷は語っています。
「韓信1」の原文/書き下し文/現代語訳はこちらへ。
後にHP「韓信2/2」(こちらへ)で、 劉邦は蕭何(しょうか)の推薦を受けて無名の韓信を抜擢して大将軍(最高司令官)の地位を与えました。韓信は劉邦に敵項羽攻略の戦略を授けました。こうして劉邦が項羽との戦争で勝利するために重要な役割を果たすこととなります。
「韓信2」のあらすじ/原文/書き下し文/現代語訳はこちらへ。
音声は1:50後から
↓ ↓ ↓
コメント
コメントを投稿