源氏物語「忘れ形見」(玉鬘)もっと、深くへ !




玉鬘(たまかずら): 光源氏が理想とする女性像を体現・輝きを放つ

 『源氏物語』の第一部(桐壺から藤裏葉までの33帖)において、玉鬘系とは計16帖の巻の総称である。残りの17帖を紫上系と呼ぶ。武田宗俊氏によって唱えられ、その後広く使用されるようになった概念。玉鬘系では玉鬘が物語の中心として語られていきます。

 玉鬘光源氏の若いころの愛人夕顔が急死して(こちらの記事を)遺された女児、忘れ形見。光源氏の晩年に出会うこととなり、その理想の女性像が投影された存在として描かれていると考えられます。作者紫式部が、理想の主人公光源氏がイメージするであろう理想の女性像として描き出した女性といえます。

🌸 玉鬘の魅力並外れた美貌

 物語の中でも随一の美女として描かれ、光源氏を一目惚れさせるほど。

気品と華やかさ: 最上流の落胤(らくいん)という血筋と育ちからくる気品と華やかさを持ち合わせています。
純粋さと無垢さ: 世間知らずで純粋なため、男心を翻弄してしまうことも。
才能豊かさ: 歌や楽器、舞などに優れ、教養の高さも伺えます。


💔 玉鬘の苦悩

 一方で、玉鬘は複雑な生い立ちゆえに、様々な苦悩を抱えています。

出生の秘密: 最上流の落胤という出生を隠し、波乱万丈な人生を送ることになります。
求婚者の多さ: その美貌ゆえに多くの男性から求婚され、心を悩ませます。
光源氏への恋心: 光源氏に惹かれながらも、年の差や彼の立場に思い悩みます。
自分の意志で生きられない不自由さ: 周囲の思惑に翻弄され、自分の意志で自由に生きることができません。


 玉鬘に心を寄せる源氏の異母弟蛍兵部卿宮(ほたるきょうひょうぶのみや)が玉鬘と対座したとき、源氏はいたずら心から、袋に入れて隠していたホタルを解き放つ。暗闇に一斉に飛び交うホタルが光を放ち、その一瞬、蛍兵部卿宮玉鬘の横顔を見てしまい、その美しさにますます夢中になってしまうシーンは有名。冒頭のイラストを参照ください。


✨ 光源氏の光と影

 玉鬘光源氏にとって、理想の女性であると同時に、 彼のエゴや所有欲を体現する存在 でもあります。光源氏は手元に引き取った後、玉鬘を自分の理想の女性に育てようとします。
 玉鬘の気持ちよりも、自分の所有欲を優先してしまう場面も見られます。

 このように、玉鬘は 美しさ、才能、苦悩、そして光源氏との複雑な関係 を通じて、「源氏物語」における重要な女性の一人として描かれているのです。


源氏の圧倒的な魅力、玉鬘の新しい人生の出発

 この文章は、光源氏玉鬘に初めて会いに行くシーンを描いています。

 まず、この場面は光源氏の並外れた美しさと魅力が強調されています。玉鬘の侍女たちが、光源氏の美しさに感服している様子から、その存在がいかに圧倒的であるかが伝わってきます。光源氏が几帳(きちょう)の隙間から見えた瞬間に、その美しさが「そら恐ろしさ」を感じさせるほどであったことから、源氏の持つカリスマ性が強調されています。

 また、光源氏玉鬘のやり取りには、光源氏の親心と優しさが感じられます。光源氏玉鬘に対し、親身になって接する姿勢は、彼がただの美しい貴公子ではなく、人間味あふれる人物であることを示しています。彼の涙を流す場面では、玉鬘の母である夕顔への思い出が強調され、源氏の深い感情が描かれています。

 さらに、光源氏玉鬘との距離感が微妙であることも興味深い。光源氏は親密に接しようとしますが、玉鬘はまだ戸惑いと恥ずかしさを感じており、それが二人の関係性の初々しさを強調しています。これは、光源氏が「恨みがましく」言うシーンに特によく現れており、玉鬘の返答が母親夕顔に似ていると感じることで、源氏の心が少しずつ融けていく様子が描かれています。

 最後に、光源氏が右近に玉鬘の世話を命じて帰るシーンでは、源氏の責任感と配慮が感じられます。玉鬘に対して深い関心を持ちつつも、強引に迫るのではなく、彼女の立場や気持ちを尊重している姿勢が好感が持てます。

 全体として、この文章は光源氏の複雑な感情と人間性がよく描かれており、源氏の魅力が溢れるシーンです。また、玉鬘の戸惑いや恥ずかしさから、新たな人生の始まりに対する期待と不安が伝わってきます。


源氏物語「忘れ形見」(玉鬘)問題へ

源氏物語「忘れ形見」(玉鬘)解答(解説)

〔一)

問1 aすぐに bおとど cみきちょう

問2  (年ごろ=長年 「うひうひしさ」=慣れていないこと、経験が乏しいこと、うぶであること 「さしも」=〈打消しの言葉を伴って〉それほど、そんなにも、指示内容は後にある「恐ろしいと感じるほど美しいこと」を承ける 「きこえ」は作者が源氏に敬意を表す謙譲語)

問3 あまりにも美しすぎたから

問4③玉鬘が源氏に対して源氏と初対面する玉鬘の心持、源氏のステイタスの高さ、立派さに気後れする

  ⑥ 源氏が玉鬘に対して「恥づかしげなり」=こちらが気後れするほど立派だ

問5 無遠慮なんだね(「面なし」=あつかましい・無遠慮だ 「面な〈形容詞「面なし」の語幹〉+「の」+「名詞」⇒詠嘆表現

問6 なるほど夕顔の娘だなあと思われたこと。(本文にはない右近の玉鬘についての話題。源氏は若い時の愛人の遺児の後見人・「親」という意識がある。)

問7 え(副詞)なむ(係助詞)きこえ(動詞・下二・未然形)られ(可能の助動詞・「らる」の未然形)ざり(打消しの助動詞「ず」の連用形)ける(過去の助動詞・「けり」の連体形・詠嘆・「なむ」―「ける」で係り結び)。


〔二)

問1 a前世の因縁 bご年齢(「ほど」は程度・ようす・時分・時間・距離・年齢などのおおよそを言う名詞。)

問2 c源氏の玉鬘へ敬意を表す謙譲語 d作者の玉鬘へ敬意を表す尊敬語 e源氏の玉鬘へ敬意を表す尊敬語 (敬語法は①敬語の種類②敬意の方向をとらえて詠むことが肝要。まだの人はすぐ文法テキストで、inputを。)

問3 どうしてそんなに黙ってばかりいらっしゃるのですか(「おぼつかなく」は、はっきりしないの意の形容詞の語、直後の「きこえむことも恥づかしければ」から逆算しての解釈。)

問4 まだ足も立ちませんうちに筑紫に下りましてからは、何事も見るかげもないことになりまして。(「日本紀竟宴和歌」は、宮中での《日本書紀》講読の終了時に宴席で詠まれた題詠和歌の記録です。この和歌は、『日本書紀』中に登場する神や有徳の天皇、有名な諸臣などを題材にして、参集者がその事蹟について作歌したものです。平安前期に行われた「読日本紀」の会の終了後に詠まれ、その内容は『日本紀私記』に記されています。「蛭の子」は3年で成長するとされていた。)

問5 見む

問6 声も夕顔によく似ているし、気立てもまんざらでない返事の仕方だなあと好感を持った。(39字。「ほのかに聞えたまふ声ぞ、昔人にいとよくおぼえて…心ばえ言ふかいなくはあらぬ御答へと思す」を簡潔にまとめる。)

問7 平安時代中期・紫式部・彰子・藤原道長

源氏物語「忘れ形見」(玉鬘)問題へ

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