こころ(夏目漱石) 2/2 ~不可解で厄介で難儀なもの !

 夏目漱石 

こころ」 2/2 

 ~不可解で厄介で難儀なもの ! 


夏目漱石「こころ」本文(青空文庫)はこちら

夏目漱石「こころ」本文 西村俊彦さんによる朗読こちら



Kの目線から語られる「こころ」

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Aoi Bungaku Capítulo 8 - Kokoro (Parte 2) 2012/07/29


Kとは

 も不可解な人間。「先生」(遺書の「」)と同様スーパー・エリートとなるような能力の高い人ですが、孤独な人。「道のためにはすべてを犠牲にする」というが、結局何をしたいのか…?物欲を遠ざけ、精神の純粋化向上にまい進してきた…?ストイックに生きることそのものが生きる目的…?そうならお嬢さんに恋心を抱いたことへの自罰として自殺するのも分かるような気もします。「道」というような不可知で超越的ものを至上のものとすること(宗教がそういうことの一つになりますが)は、純粋でファナティックであればあるほど危険なもの…自由奔放に振舞うことそのものを、または、自由恋愛をすることそのもを、さらに、理想を主張することそのもを正義と考えたり目的にする牧歌的でナイーブな浪漫主義の危険性が語られているのでしょうか…?


「お嬢さん」とは 

 お嬢さんも不可解。何を考え、「先生」(遺書の「」)のことそしてのことをほんとうはどう思っているのかよく分からない。結果的にもてあそぶことになっているのでは。2人の男をもてあそび自殺に導いたそんな女が持つ魔性が描かれているのか…?


「奥さん」とは 

 「奥さん」はどういう人…?戦争未亡人で下宿屋を経営してるんだけど、実は、「奥さん」は娘の為に「先生」(遺書の「」)の相当の額と思われる預金を欲しがっていたのでは…? もっとも、親としてはスーパー・エリートとなる、お金持ちの男性と娘を結婚させたいと思うのは普通ですが。




「先生(私)」とKの関係 

 「先生」(遺書の「」)は実は同性愛…?と解釈する人もいます。江戸時代、山本定朝という人は『葉隠』という書物で、男同士の肉欲とは対極にある形而上的で、しかも、死後初めて相手が気づくような忍ぶ恋こそ至上の思慕だと主張しています。いや、Kと「先生(私)」だけではなくこの小説の語り手「私」と「先生(私)」も…?さらに、Kと「先生」(私)が自殺した後、この小説の語り手「私」と静に何が起こるのか…?と考えてしまうように描かれているようにも思います。


漱石が語ろうとしていること ? 

 の自殺と「先生()」の自殺は、漱石が生きた明治という時代に出現した、的なものや「先生(私)」的なものが行き着く先の暗い予感として描かれてるのでしょうか…? 明治天皇崩御があり、「生き残っているのは畢竟(ひっきょう)時勢遅れだという感じ」に胸打たれた「先生()」は乃木将軍殉死の報が到来した2・3日後に自殺を決意します。ただ、「先生()」は乃木将軍とは違って妻を道連れにすることはしなかったことも、時代に対する漱石のメッセージがこめられているようです。


 小説全体が、漱石が生きている明治という時代とその時代を生きる人間のメタファとなっているように思います。

 そしてまた、人の〈こころ〉についていくつもの視点を設定してその立体構造を描こうとしたようにも思います。一筋縄では行かない不可解で厄介で難儀なもの…人の〈こころ〉…!!!


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こちらは「ラジオドラマ」
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夏目漱石「こころ」(ラジオドラマ)
2014/01/16
夏目漱石「こころ」 ■作品紹介 夏目漱石晩年の代表作。 恋愛と友情の狭間で葛藤し、 利己主義化していく男の『心』を描く。 ■出演 ・私:内匠靖明 ・K:出先拓也 ・奥さん:早川昌佐(同人舎) ・お嬢さん:中森朱音 ※劇中、使用している音楽・効果音、画像は全て著作権フリーの素材です。


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