「株を守る」「守株(しゅしゅ)」は古い習慣に固執して進展がないとか、一度味をしめたことの再現を願い、努力しないでよい結果を得ようとするなどの意味で使われます。その典拠となったのが、「韓非子(かんぴし)」の問題文となっている文章です。
「韓非子(かんぴし)」とは
戦国時代の韓非(かんぴ)の選になる書。儒家の仁義道徳による政治を批判し、法の統制によって、強固な国家を実現することを主張しました。法家の代表的な著作であり、秦のBC221の統一国家の(こちらを)思想的支えとなりました。
暴動・動乱・戦乱が常であるユーラシア東部大陸で、権謀術策(けんぼうじゅっさく。こちらを。)を説くことを職業にしていた者たちが大勢いたのは、いかにも中華らしい。現在も外交で「三戦」(こちらを)と言われる、言葉や言説による戦略戦術を巧みに使うのが中華の伝統であるようです。
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あらすじ
畑を耕していた人が、切り株に衝突して死んだうさぎを手に入れた。そこでその人は農作業をやめて、切り株を見守り続けて再びうさぎを手に入れようとしたが、うさぎは二度と手に入らず、国中の笑いものとなった。昔の政治のやり方で今の時代の民を収めようとするのは、切り株を見守り続けるのと同じことだ。
「株を守る」「守株(しゅしゅ) 」
「守株」の話は、儒家が、古代に理想的な政治をしたとされる「先王」の政(まつりごと)を遵守(じゅんしゅ)し、情況の異なる現代にも当てはめようとしようとすることを批判するものです。
そもそも先王の政治は、人間の性質が善であるとする(性善説)前提に基づき、〈仁〉という人間愛を根底に据えた徳治です。一方、韓非(かんぴ)は人間の性質は本来善ではなく、自分の利益を優先し他人のことは考えようとはしないものである(性悪説)としました。したがって、法によって規制しなければ統治できないとしました。〈信賞必罰(しんしょうひつばつ)〉、刑罰を厳正に行うのが、政治の基礎であるとしたのです。出発点となる人間観が真逆(まぎゃく)なのです。
中華の人々は農業・商業を生業としてきたようですが、ここでは兎捕りで生活ができることが前提になっていて、遊牧や狩猟採集生活をしていた種族の文化浸透混交がみえる話題。
わが国では、旧習にこだわって融通が利かない、とか、一度味をしめたことの再現を願い、努力しないでよい結果を期待するなどの意味で使われています。
この話をもとにした、北原白秋作詞、山田耕作作曲の童謡「待ちぼうけ」は長く愛唱されてきました。中華の故事がわが国風に消化されていておもしろいとおもいます。
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守株 解答/解説
問1 a そうひと (「宋の国の人」の意味の場合習慣的にソウヒトと訓むようです。) b こひねがふ(「こいねがう」でも。) c なる(「なす・なる・ために」文中での働きによって読み分けられるようにしましょう。)
問2 田を耕す者有り
(「有」「無」「多」「少」「難」「易」「欲」「得」「不得」「能」「不能」は頻出の返読文字。input ! 「耕」〈述〉+「田」〈目〉が「者」を修飾。赤字に基づいてこの一文の構造を理解しよう。)
問3 働かなくても兎が手に入る(楽に生活できる)と思ったから。
問4(1)兎復た得べからずして
(2)ウ (「不可復~」は部分否定。二度とは~ない。ここでは「できない」。)
(3)エ (「復不可~」は全部否定。また~ない。ここでは「できない」。)
問5 欲(上)以(二)先王之政(一)、治(中)当世之民(上)
(返り点は、各漢字の左下に小さく記します。)
問6 エ
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