九月二十日のころ(徒然草) もっと深くへ !

 『徒然草』とは

 兼好法師によって鎌倉時代終わりころに書かれた枕草子』(清少納言)・『方丈記』(鴨長明)と併せて日本三大随筆と言われている

 自然、社会、人間のありように対する思いを述べた随筆で、さまざまな角度から斬新(ざんしん)な感覚で切り込んだ作品。王朝文化へのあこがれ有職故実(ユウソクコジツ。礼式・官職・制度などの由来など)に関する心構え、処世訓自然美の新しい見方など、素材・対象は多彩を極めている。

 仏教的無常観・老荘的虚無思想・儒教的倫理観が基盤にあるとされ、また、作者兼好法師和歌四天王の一人に数えらたように、美的感受性にも優れている。


中心から周縁へ

 秋の終わりのころ、しのび妻(こちらを)を訪問する高貴な人を描き、兼好は、この男女に心からの共感を感じている。
 

  しのび妻との逢瀬もシチュエーションに応じよき程を心得、相手の、わざとならぬ薫物(たきもの。こちらを)名残を惜しむ姿に、兼好は感心する。優なる人とは、すべてこの日常朝夕の心遣いが血肉化している人

 



 晩秋の月見をはじめ、ここで語られているすべてが、典型や殊更な作為〈=中心〉から距離をおいて、作為的な無作為ともいえるもの〈=周縁〉に価値を見出そうとする、中世的な美意識とも言えるでしょう。そして、これは現代の我々の意識や挙止動作(きょしどうさ)に深いところで影響を与えていると考えてもいいと思います。
  

  簡潔な表現が強いイメージ喚起力を持っていて、「★佳人薄命(かじんはくめい)」譚(たん)にもなっており、武者小路実篤(こちらを)は、この段を「一遍の詩であり、美しい短編小説とも言える」と評しています。

 中世の晩秋の夜更けを、もう一度兼好と共に散策してはいかがですか…。

   ★ 「佳人」とは、容姿の美しい女性のこと、または、品格や知性のある女性のこと。「薄命」とは、短命なこと、または、運命に恵まれないこと。




あなたの「心の疲労」を癒す方法とは?
 徒然草|兼好法師

九月二十日のころ 問題 へ

九月二十日のころ 問題解答(解説)

問1 (1)ながつき
   (2)
   (3)(「上弦の月」は7・8日ころ、「下弦の月」は22・23日ころの月。)

問2 「ある人」が従者に(自分が訪問したことの)取次ぎを申し入れさせた。(ほかにもいろいろ解釈の可能性がある。これが自然か。)

問3 (1)(客を送り出してそのまま)すぐに掛け金を掛けて中へ引きこもってしまたならば、残念であっただろう(に)。

   (2)(客を送り出してそのまま)すぐに掛け金を掛けて中へ引きこもってしまわず、月を眺めつつ名残を惜しんでいた姿に感心してしまった。(「ましかば…まし」の反実仮想の用法です。この用法名も出題されます。(1)の仮定に基づく推定と(2)の事実を理解しておきましょう。)

問4 過去の助動詞「き」の連体形。体言止めに準ずる感動表現となる。(上に係助詞を受けない終止法になってる。この用法、連体形止めという。)

a.Q

 ① 1.特に手入れをしていない雑草の茂っている庭に、ことさらに焚いたわけではない香(こう)の匂いがしっとりと薫っていたこと。

   2.客を送った女主人が、すぐに部屋に入って妻戸をしめてしまわないで、しばらく月を眺めていたこと。

 ② ある人の知り合いの女性

 ③ 「けり」は伝聞の過去、亡くなったということを聞き知ったことになり、「し」は(「き」の連体形で)直接経験の過去、死の噂を直接聞いたことになる。

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