『徒然草』とは
兼好法師によって鎌倉時代終わりころに書かれた。『枕草子』(清少納言)・『方丈記』(鴨長明)と併せて日本三大随筆と言われている。 自然、社会、人間のありように対する思いを述べた随筆で、さまざまな角度から斬新(ざんしん)な感覚で切り込んだ作品。王朝文化へのあこがれ、有職故実(ユウソクコジツ。礼式・官職・制度などの由来など)に関する心構え、処世訓、自然美の新しい見方など、素材・対象は多彩を極めている。
仏教的無常観・老荘的虚無思想・儒教的倫理観が基盤にあるとされ、また、作者兼好法師は和歌四天王の一人に数えらたように、美的感受性にも優れている。
中心から周縁へ
秋の終わりのころ、しのび妻(こちらを)を訪問する高貴な人を描き、兼好は、この男女に心からの共感を感じている。
しのび妻との逢瀬もシチュエーションに応じ「よき程」を心得、相手の、「わざとならぬ」薫物(たきもの。こちらを)や名残を惜しむ姿に、兼好は感心する。優なる人とは、すべてこの日常朝夕の心遣いが血肉化している人。
晩秋の月見をはじめ、ここで語られているすべてが、典型や殊更な作為〈=中心〉から距離をおいて、作為的な無作為ともいえるもの〈=周縁〉に価値を見出そうとする、中世的な美意識とも言えるでしょう。そして、これは現代の我々の意識や挙止動作(きょしどうさ)に深いところで影響を与えていると考えてもいいと思います。
簡潔な表現が強いイメージ喚起力を持っていて、「★佳人薄命(かじんはくめい)」譚(たん)にもなっており、武者小路実篤(こちらを)は、この段を「一遍の詩であり、美しい短編小説とも言える」と評しています。
中世の晩秋の夜更けを、もう一度兼好と共に散策してはいかがですか…。
★ 「佳人」とは、容姿の美しい女性のこと、または、品格や知性のある女性のこと。「薄命」とは、短命なこと、または、運命に恵まれないこと。
あなたの「心の疲労」を癒す方法とは?
徒然草|兼好法師
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九月二十日のころ 問題解答(解説)
問1 (1)ながつき
(2)エ
(3)イ(「上弦の月」は7・8日ころ、「下弦の月」は22・23日ころの月。)
問2 「ある人」が従者に(自分が訪問したことの)取次ぎを申し入れさせた。(ほかにもいろいろ解釈の可能性がある。これが自然か。)
問3 (1)(客を送り出してそのまま)すぐに掛け金を掛けて中へ引きこもってしまたならば、残念であっただろう(に)。
(2)(客を送り出してそのまま)すぐに掛け金を掛けて中へ引きこもってしまわず、月を眺めつつ名残を惜しんでいた姿に感心してしまった。(「ましかば…まし」の反実仮想の用法です。この用法名も出題されます。(1)の仮定に基づく推定と(2)の事実を理解しておきましょう。)
問4 過去の助動詞「き」の連体形。体言止めに準ずる感動表現となる。(上に係助詞を受けない終止法になってる。この用法、連体形止めという。)
a.Q ① 1.特に手入れをしていない雑草の茂っている庭に、ことさらに焚いたわけではない香(こう)の匂いがしっとりと薫っていたこと。
2.客を送った女主人が、すぐに部屋に入って妻戸をしめてしまわないで、しばらく月を眺めていたこと。
② ある人の知り合いの女性
③ 「けり」は伝聞の過去、亡くなったということを聞き知ったことになり、「し」は(「き」の連体形で)直接経験の過去、死の噂を直接聞いたことになる。
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