安元の大火(方丈記)もっと深くへ !

 方丈記とは

 鎌倉時代前期に鴨長明によって著わされた随筆。平安時代は女房文学の時代とされ、中世には隠者(いんじゃ)や僧侶によって歌・日記・随筆などの自照的な作品が書かれたことから、文学中世は隠者文学(いんじゃぶんがく)の時代とされるが、その隠者文学の代表的作品とされる。清少納言「枕草子」兼好法師「徒然草」とともに三大随筆とされている。

 仏教的無常観を基調に、大風(おおかぜ)・飢饉(ききん)などの不安な世情や、日野山(こちらを)に閑居した方丈の庵(いおり)での閑寂な生活を、簡明な和漢混交文(こちらを)で描いている。


叙述の視点

 都の三分の一を焼き尽くした地獄そのものと言える大火。今から75年前、東京23区の三分の一相当が焼き尽くされた東京大空襲(こちらを)が重なって想像され恐ろしくなります。

 ここでは、まずその火元を樋口富小路(ひぐちとみこうじ)の舞人(まいびと)を泊めていた仮小屋ととらえ、吹きめぐる風に、あちらこちらと燃え移っていくうちに、扇を広げたように末広がりに広がっていったと俯瞰的に類焼範囲を概観しています。

 次に、「遠き家」「近きあたり」と遠近に分けて描き、さらに、地上に対する天空の状況を灰・炎に着目してリアルに描いています。

 次に、ある人は体一つで、やっと逃げ出したものの、家財を取り出すことはできない。あらゆる宝の数々はすべて灰や燃えかすとなってしまった。その損害は、どれほど多大であったことかと、この大火にあった人と家のありさまが全体的にとらえられています。

 さらに、その火事のとき、公卿(くぎょう)のが十六焼けてしまった。ましてそのほかの焼けたは、数えて知ることもできない。全体で京都のうちの、三分の一に達したということだ。男女の死者は数十人、馬や牛などは(どのくらい死んだか)際限もわからないと、人と家の被害の概況がまとめられています。

大火の後

  都でを作ることを、名誉や虚飾を競うためあくせくすることの典型と見て、命を生きることの大切さを二の次にしている人々の生きざまを、はかなく無意味なものという実感が語られているようです。


【三大随筆】方丈記|鴨長明 ~災いと欲望とストレスが渦巻く世界を、どう生きるか~



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安元の大火 問題解答(解説)   

問1 のがるる(3段「あるいは」で始まる文中にある。「のがる」はラ行下二段活用の語で、ここは連体形「のがるる」。)

問2aよそじ  b午後7時~9時  cあちらこちらへ  d残すところがない  eすべて  fつまらない

問3 完了の助動詞「ぬ」の連用形「に」と、過去の助動詞「き」の終止形「き」からなる。

問4②  ③

問5 どうして生きた心地ががあろうか(14字。「全く生きた心地はしない」でも。)

問6 数へ知るに及ばず

問7 随筆 鎌倉時代 鴨長明


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