資盛との思ひ出(建礼門院右京大夫集)もっと深くへ !


資盛との思ひ出

『建礼門院右京大夫集』




建礼門院右京大夫集とは

 平安末期、高倉天皇の中宮建礼門院(平徳子。こちらを)に仕え右京大夫(うきょうのだいぶ)とよばれた女房の家集。作者の父藤原伊行(これゆき)は、書・(こと)の名手、著書に『源氏物語釈(しゃく)』がある。母夕霧は琴(こと)弾きとして著名だった。

 「建礼門院右京大夫集」は、晩年の作者が、『新勅撰和歌集』撰進のおりに藤原定家(ていか)から、編纂(へんさん)資料として作品の提出を求められたもの。

 内容は平家一門の栄耀(えよう)、源平争乱、平家壊滅という時代的な悲劇を背景とした作者と平資盛(たいらのすけもり こちらを)との恋愛が主軸で、公達(きんだち)との生別死別の悲嘆に耐えて乱世を生きなければならなかった心情の詠出350余首(贈答歌を含む)が、長文の詞書(ことばがき)でつづり合わされ、ここに作者の生涯の軌跡をたどることができる。


平資盛(たいらのすけもり)2011/07/24

平氏の公達(きんだち)との恋

 作者の恋人平資盛(たいらのすけもり)は平清盛(たいらのきよもり)の孫にあたる平家の公達(きんだち)。この平家政権下の貴公子からの愛情を感じた時、若い作者の胸はときめいたでしょう。しかし、周囲の人たちは資盛(すけもり)との交際には賛成ではありませんでした。資盛にはすでに正妻がいて、作者との身分差を考えれば愛人以上の存在にはなれなかったからです。でも、周囲から認められない恋は、ますます恋心が燃え上がるもの。親密な仲になっていきました。



滅びを覚悟した逢瀬

 源氏の勢力が勢いを増し、世情は次第に不穏(ふおん)になり、平家は西海(サイカイ。瀬戸内海・九州方面の海)に逃れていく直前。資盛(すけもり)が作者に語ったことばは、読み取りにくいかもしれません。次の二点にまとめられます。
 
1.自分が死んだら、後世(ごせ)を弔(とむら)ってもらいたい。
2.しばらく生きながらえていても、過去のことは断ち切る覚悟なので手紙は出さない。

 作者は、理性的にはもっともなことと思いつつも、悲しくて涙のほかには言葉も出ない

「夢のうちの夢」

  そしてとうとう平家一門の都落ちという別離がやってきました。作者はそれを「夢のうちの夢と言っています。夢の中で夢を見ているような、とうてい現実とは思えない、いや、思いたくない出来事としているわけです。

 癒しがたい悲しみ、その気持ちを分かってくれる人は誰もいない孤独感。ひたすら仏に向かって泣くしかない。いっそ死んでしまいたいと思うがそれもかなうはずがなく、出家することもできない。こんな悲しみの中、それでも生きている自分が疎(うと)ましい。「またためし…」という歌にはそんな気持ちが詠まれているわけです。


007 日記の人間関係Ⅱ 2020/02/04


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資盛との思ひ出  問題解答(解説)   

問1 a噂される(「評判になる」なども)・bお話し申し上げる・c手紙を差し上げる(同文にある「文やる」の同意の謙譲語として使われている。)

問2①心の余裕がなさそうであった(「ひま」は隙で、すき間の意。「なげなり」で形容動詞の語、無いようであるの意。「」は過去の助動詞「き」の連体形。)

  ②ふだんの口癖(「言ぐさ」はいつも話す事柄、口癖の意。)

  ③亡き人の数(仲間)に入ること「はかなくなる」で死ぬの意。)

  ④(私の)後世の供養の事ことも必ず考えてください。(「」は仏道。「道の光」は、冥途の闇を照らす仏法の光のこと。)

  ⑤よろづりぬる

  ⑥作者のことやこの世のもろもろのことに執着し、思いきれない弱い心。(「ただ今より、身を変へたる身と思ひなりぬる」の以前の心のこと。資盛はなぜそうしなければならなかったのか?)

  ⑦(夢の中の夢のような)とても現実とは思えない(資盛が海の藻屑と消えたという)悲しい出来事(「夢のうちの夢」とは、夢の中でさらに夢を見ているような、とても現実の出来事とは思えないような出来事の意。)

  ⑧人の寿命は決まっていて、死にたいと思っても死ねるわけではないこと


3 ⑨死ぬことも出家も出奔することもできずそのまま生きてしまうこと。(「さて」は、そのようにの意の副詞の語。直前「命は限りあるのみにあらず、さま変ふることだにも心に任せで、一人走り出でなんどは、えせぬ」をまとめる。「あら」は、生きるの意の「有り」の未然形。「るる」は自発の助動詞「る」の連体形)

問4 けんれいもんいんのうきょうのだいぶしゅう  鎌倉時代


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