守株待兎
(韓非子)
~元になるお話、"昔の聖王を絶対視するのは愚か ! "
守株は音読で「しゅしゅ」とよみ、また「株を守る」と訓読しています。同じく、守株待兎は「しゅしゅたいと」と音読し、また、「株を守って兎〈うさぎ〉を待つ」と訓読しています。
古い習慣にこだわる・進歩がないという意味で使われています。
この「守株」(二字熟語)「守株待兎」(四字熟語)の元になるお話です。
守株待兎(韓非子)を現代語で
紀元前6~3世紀、中国の春秋戦国時代、多くの思想家、学派があらわれました。そんな学派に儒家や法家がありました。儒家では、尭(ぎょう)・舜(しゅん)をはじめとする昔の聖王の政治のやり方を、絶対不変なものとして信奉する思想です。一方、法家ではそれを否定し、政治の方法は世の中の移り変わりに応じて変化していくべきものと考えました。次の「守株待兎」は法家の韓非子が儒家を批判するため用いたたとえ話です。
宋の国の人に畑を耕すものがいた。畑の中に切り株があった。兎が走ってきて切り株にぶつかり、首を折って死んだ。そこで自分のすきを放り出して切り株を見守り、また兎を手に入れることを望んだ。兎は二度と手に入れることができずに、その身は宋の国の笑いものとなった。
今、昔の聖王の政治のやり方で現代の民を治めようとするのは、まったくもって切り株を見守っているのと同じたぐいである。守株待兎(韓非子)原文+書き下し文+口語訳はこちらへ
悩めるサラリーマンのための、刺さる韓非子!!
「守株待兎」「守株」とは
「守株待兎」の話は、儒家が、古代に理想的な政治をしたとされる「先王」の政(まつりごと)を遵守(じゅんしゅ)し、情況の異なる現代にも当てはめようとしようとすることを批判するものです。
そもそも先王の政治は、人間の性質が善であるとする(性善説)前提に基づき、〈仁〉という人間愛を根底に据えた徳治(とくち)です。一方、韓非(かんぴ)は人間の性質は本来善ではなく、自分の利益を優先し他人のことは考えようとはしないものである(性悪説)としました。したがって、法によって規制しなければ統治できないとしました。〈信賞必罰(しんしょうひつばつ)〉、刑罰を厳正に行うのが、政治の基礎であるとしたのです。一言でいうと法治(ほうち)です。出発点となる人間観が真逆(まぎゃく)なのです。
紀元前221年に成立した中国初の統一国家秦は、法家の考えを統治の基本にしました。
中華の人々は農業・商業を生業としてきたようですが、ここでは兎捕りで生活ができることが前提になっていて、遊牧や狩猟採集生活をしていた種族の文化の浸透・混交がみえる話題とも見えます。
「守株」「守株待兎」という熟語は儒家や法家とは無関係に、古い習慣にこだわる・進歩がない・旧習にこだわって融通が利かない・偶然の幸運を当てにする愚かさという意味で使われています。
この話をもとにした、北原白秋作詞、山田耕作作曲の童謡「待ちぼうけ」は長く愛唱されてきました。中華の故事がわが国風に消化されていておもしろいですね。
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