俊頼髄脳「歌のよしあし」 もっと深くへ !

 源俊頼『俊頼髄脳』

「歌のよしあし」

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「俊頼髄脳」とは

 平安時代後期に源俊頼(みなもとのとしより)によって書かれた歌論書。歌論書とは、和歌に関する理論および理論書のことで、歌の定義や要素、分類、歌病などのほかに、歌集の校訂や注釈、類纂、歌書の文化史的研究などを含みます。訓詁注釈(こちらを)をはじめとして学問的傾向の強いものは歌学書とも呼ばれます。藤原浜成『歌経標式』、伝壬生忠岑『忠岑十体』、藤原公任『新撰髄脳』『和歌九品』などが書かれていました。

 「俊頼髄脳」は、歌論として体系的に書かれたものではなく、若い女性の作歌手引きになるように、和歌全般の知識と、和歌説話を多分に盛り込んでいます。

源俊頼とは

 平安後期の歌人。経信(つねのぶ)の子。俊恵(しゅんえ)の父。自由清新な和歌によって高く評価され、保守派の藤原基俊(もととし)と対立した。金葉集(きんようしゅう)を撰進。家集「散木奇歌集(さんぼくきかしゅう)」、歌学書「俊頼髄脳」。こちらを。

藤原公任の歌論とは

 藤原公任(ふじわらのきんとう)とは、平安中期の歌人・歌学者。通称、四条(しじょう)大納言。故実(こじつ=昔の儀式・作法・服装などの、さだめ・ならわし)に詳しく、また、漢詩・和歌・音楽にすぐれた。「和漢朗詠集」「拾遺抄(しゅういしょう)」「三十六人撰」などを撰。歌論書「新撰髄脳」「和歌九品(わかくほん)」など。こちらを。
 ここで、公任について俊頼は次のように述べています。公任和泉式部の歌で、「津の国の(★1)」の歌の、掛詞(かけことば)を駆使し、発想・趣向・表現がたくみであると評価し、「暗いきより(★2)」の歌は、『法華経』の文句そのままで、表現の工夫が見られず、独創性がないとしています。


★1 津の国のこやとも人をいふべきにひまこそなけれ葦の八重ぶき
 摂津の国の昆陽(こや)ではありませんが、あなたに「来(こ)や。」(来てくださいよ)と言うのがよいのでしょうが、人の見る目の隙(すき)がなくて、その機会がありません。昆陽の葦の八重ぶきの隙がないように。

★2  暗きより暗き道にぞ入りぬべきはるかに照らせ山の端の月
 私は煩悩(ぼんのう=仏教用語で、心身を悩まし煩わせる心のはたらきを意味します)の闇からいっそう深い闇へと迷いこんでしまいそうだ。はるか彼方(かなた)まで照らしてほしい、山の端(は)に出た真如(しんにょ=真実の姿)の月よ。


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俊頼髄脳「歌のよしあし」問題解答(解説)

問1(1)意外にたいへんな試み 格別に難しい試み

  (2)評判高い歌が必ずしも名歌とは言えないから(和泉式部の名歌として公任が選んだ歌が、「暗きより」ではなかったことから。)

問2 和泉式部と赤染衛門

問3 「申さ」は謙譲の補助動詞「申す」の未然形で作者が四条大納言(公任)に敬意を表し、「れ」は尊敬の助動詞「る」の連用形で作者が中納言(定頼)に敬意を表す。

問4 世間の人が、和泉式部の歌で「はるかに照らせ」歌を名歌だと言っていること。

問5 (文意から、後にある打消しの「ぬ」と呼応して…デキナイという意味となる副助詞と考えます。)

問6 「本」は「暗きより暗き道にぞ入りむぬべき」を、「末」ははるかに照らせ山の端の月」をさす。(「本」は和歌の上の句、「末」は下の句。)

問7 「津の国の昆陽ではないが、来やとも人を」と歌によみ、その「こや(昆陽・来や)」という音から「小屋」を暗示し、その狭い小屋のイメージから「ひまこそなけれ(すき間がない・機会がない)の句を導き出したこと。

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