💥解読💥山崎正和『水の東西』

💥解読💥

山崎正和『水の東西』




鹿威(ししおど)し
escassy(エスカッシー) 風景Channel


 全体を四段落でとらえ、形式段落は初めから通し番号で下記のようにカウントすることにします。

 教科書などの本文に各段落と各形式段落を書き入れてやってみてね😀


第一段落

1 「鹿おどし」が動いているのを見ると、

2 見ていると、単純な、緩やかなリズムが、

第二段落

3 私はこの「鹿おどし」を、ニューヨークの大きな銀行の

4 流れる水と、噴き上げる水。

5 そういえばヨーロッパでもアメリカでも、

第三段落

6 時間的な水と、空間的な水。

7 そういうことをふと考えさせるほど、

8 西洋の空気は乾いていて、

第三段落

9 言うまでもなく、水にはそれ自体として

10 見えない水と、目に見える水。

11 もし、流れを感じることだけが大切なのだとしたら、


※(〇.△)→ 〇は形式段落、△ は何文目。


第一段落

💥設問💥

①『「鹿おどし」が動いているのを見ると、その愛嬌の中に、なんとなく人生のけだるさのようなものを感じることがある。』(1.1)について、

(イ)「その愛嬌の中に」とは、「鹿おどし」のどのような点を「その愛嬌」としているのか、文中の語句を使いながら説明しなさい。



(ロ)「人生のけだるさのようなものを感じる」のは、ここでは鹿おどしの具体的にはどのような状態を言うものか。本文中から抜き出して示しなさい。



②「 aそれをせき止め、刻むことによって、 bこの仕掛けはかえって流れてやまないものの存在を強調しているといえる。」(1.2.5)について、

(イ)傍線部a「それ」は何を指すのか。


(ロ)傍線部「この仕掛け」とは具体的には何か。


💥解読💥

① 『「鹿おどし」が動いているのを見ると、その愛嬌の中に、なんとなく人生のけだるさのようなものを感じることがある。』(1.1)について、


(イ)「その愛嬌の中に」とは、「鹿おどし」のどのような点を「その愛嬌」としているのか、文中の語句を使いながら説明しなさい。

 「かわいらしい竹のシーソ」に見える点(形状)、「水受けがいっぱいになると」「ぐらりと傾いて水をこぼ」し(動き)、「竹が石をたたいて、こおんと、くぐもった優しい音を立てる」点(音)。

  ↑  ↑  ↑  ↑
 「愛嬌」とは、明るくかわいいことが辞書上の意味。ここでは、(1.2&3&4)に具体的に描写されています😉

(ロ)「人生のけだるさのようなものを感じる」のは、ここでは鹿おどしの具体的にはどのような状態を言うものか。

  単純な、緩やかなリズムが、無限にいつまでも繰り返される(2.1)状態と、何事も起こらない徒労がまた一から始められる(2.2)状態

  ↑  ↑  ↑  ↑

 「徒労」とは報われることのない努力のこと。人生は平凡で変化のない毎日が続き、努力しても報われないな😂と思わされることも多い。そういう人生の一面を鹿おどしから感じ取られている😉

② 「 aそれをせき止め、刻むことによって、 bこの仕掛けはかえって流れてやまないものの存在を強調しているといえる。」(1.2.5)について、

(イ)傍線部a「それ」は何を指すのか。
   流れるもの
  ↑  ↑  ↑  ↑
 「流れるもの」とは直接的には「水の流れ」と「時の流れ」。しかし、鹿おどしによって強調される「流れてやまないもの」は水や時だけにはとどまらない。後に語られる無常観でもあり、「行雲流水」の思想の導入になるものとしての話題となっている。


(ロ)傍線部「この仕掛け」とは具体的には何か。
   鹿おどし

  ↑  ↑  ↑  ↑

 「流れるもの」感じさせるのは、竹が石をたたいた時に響いてくる音の、その断続的な連続。


段落要点…「鹿おどし」が立てる音の無限に繰り返される単調で緩やかなリズムが、我々に流れるものを感じさせる。😀


第二段落

💥設問💥

①冒頭の形式段落「私はこの…くつろがせていた。」(2.1)を要約した下の文章に適切な語を本文中から抜き出して記しなさい。

 ニューヨークの大きな銀行の待合室で「〔   A  〕」を見たが、忙しすぎてその〔  B   〕を楽しむ余裕がなかった。反対に、窓の外の〔  C   〕が人々を癒していた。



①「流れる水と、噴き上げる水。」(4.1)とは、具体的には何についての表現か。

  流れる水と →


  噴き上げる水 →



💥解読💥

① 冒頭の形式段落「私はこの…くつろがせていた。」(2.1)を要約した下の文章に適切な語を本文中から抜き出して記しなさい。

 ニューヨークの大きな銀行の待合室で「〔   A  〕」を見たが、忙しすぎてその〔  B   〕を楽しむ余裕がなかった。反対に、窓の外の〔  C   〕が人々を癒していた。

  A 鹿おどし  B   C 噴水

  ↑  ↑  ↑  ↑

 ここでは、次に「流れる水と、噴き上げるみず。」とあるように日本文化と欧米文化を違いを際立たせようとしています。これは、自然と人工、時間的なものと空間的なもの、聴覚的なものと視覚的なものの対比となる。


②「流れる水と、噴き上げる水。」(4.1)とは、具体的には何についての表現か。

  流れる水と → 筧(かけひ=水を流す樋トイ)から「鹿おどし」に流れる水。

  ↑  ↑  ↑  ↑

  第一段落で話題にされている。

  噴き上げる水 → 華やかな噴水の水。

  ↑  ↑  ↑  ↑

  第二段落の形式第一段落で話題にされている。




段落要点…かつて「鹿おどし」をニューヨークの銀行で見たが、むしろ欧米人は窓外(そうがい)に見える噴水に心をなごませていた。「鹿おどし」と噴水は「流れる水と、噴き上げる水」というふうに対比される。欧米の噴水は壮大な水の彫刻であり、音を立てて空間に静止していた。🤔



第三段落

💥設問💥

①「時間的な水と、空間的な水。」(4.1)とは、具体的には何についての表現か。


 時間的な水 → 


 空間的な水 → 


② 日本人が、近代になるまで噴水を作らなかった理由は何だとされているか、外面的事情と内面的事情それぞれに分けて説明しなさい。


 外面的事情 → 


 内面的事情 → 



💥解読💥

①「時間的な水と、空間的な水。」(4.1)とは、具体的には何についての表現か。


 時間的な水 → 「鹿おどし」を鳴らして、水の流れとも時の流れともいえる、流れそのものを示す水。


 空間的な水 → エステ家の別荘の庭を埋めつくした噴水のように、空間の中に一つの造型として静止している水。


② 日本人が、近代になるまで噴水を作らなかった理由は何だとされているか、外面的事情と内面的事情それぞれに分けて説明しなさい。


 外面的事情 → ①日本は湿度が高くて、人々は噴き上げる水を求めなかった。

         ②日本は西洋に比べて水道の技術が遅れていた。

  ↑  ↑  ↑  ↑

  「そういう外面的な事情」(8.3)とあり、「そういう」は「西洋の空気は乾いていて、人々が噴き上げる水を求めた」(8.1)と「ローマ以来の水道の技術が、噴水を発達させるのに有利であった」(8.2)の逆の内容となる。


 内面的事情 → 日本人は水の自然に流れる姿を愛し、水を粘土のように造型する対象とは考えなかった。





段落要点…「鹿おどし」は時間的な性格を持っており、噴水は空間的な性格を持っている。日本人は古くから水を見ることを好んだが、噴水だけは作らなかった。これは、日本人が水の自然に流れる姿を愛したためだと思われる。😄


第四段落

💥設問💥

①「日本人は西洋人と違った独特の好みを持っていた」(9.2)について、次の問いに答えなさい。

 (1)日本人は形がないものに対してどのような好みを持っていたというのか。

 (2)形がないものに対して西洋人はどのような好みを持っていたということになるのか。




②「もし、流れを感じることだけが大切なのだとしたら、我々は水を実感するのに、もはや水を見る必要さえないと言える。」(11.1)について、なぜ「水を見る必要さえない」というのか説明しなさい。



③第一段落から第四段落全体について、この文章の論の運びと評論文としての役割をまとめて下の文のA~Dにあてはまる言葉を文中から抜き出して記しなさい。

 この文章は【 A 】と【 B 】という具体例を用いて、日本人と西洋人の【 C 】の違いを主張している。とくに【 D 】人の【 C 】を高く評価している。



💥解読💥

①「日本人は西洋人と違った独特の好みを持っていた」(9.2)について、次の問いに答えなさい。

 (1)日本人は形がないものに対してどのような好みを持っていたというのか。

    積極的に受け入れ、恐れないという好み。

    ↑  ↑  ↑  ↑

   直後にその「好み」について書かれていず、「行雲流水」(9.3)という思想をあげ、その思想の裏づけとして、「積極的に、形なきものを恐れない心の現れ」(9.4)を解答の形にした。飛躍していて読み取りにくい。「積極的に、形なきものを恐れない」(9.4)とは具体的には鹿おどしの断続的な音の響きを聞いて、直接には見えていない流れる水を実感できることを言っているが、他には、水墨画で大きく省略して空白にしたり、短歌や俳句で言葉にしてしまわないで、深い意味や感情を表現しようとするようなことが考えられる。


 (2)形がないものに対して西洋人はどのような好みを持っていたということになるのか。

    消極的で怖れの気持ちを抱くという好み。圧縮したりねじ曲げたり造型したり、人間の力でコントルしようとする好み。

    ↑  ↑  ↑  ↑

   西洋人の好みについては明確な展開に基づく言及はない。しかしこの文章では日本文化に対して西洋文化が対比的二項対立的に前提とされている。よって、日本人の「積極的に、形なきものものを恐れない」(9.1)とは逆、さらに、「圧縮したりねじ曲げたり、粘土のように造型する」(8.4)と考えてまとめる。



②「もし、流れを感じることだけが大切なのだとしたら、我々は水を実感するのに、もはや水を見る必要さえないと言える。」(11.1)について、なぜ「水を見る必要さえない」というのか説明しなさい。

 断続する音の響きを聞くことで、その間隙に流れるものを日本人固有の感性により味わえるから。

    ↑  ↑  ↑  ↑

  次の一文「ただ断続する音の響きを聞いて、その間隙に流れるものを間接に心で味わえばよい。」(11.2)、形式9段落に、日本人の独特の「好み」「感性」について述べてある。


③第一段落から第四段落全体について、この文章の論の運びと評論文としての役割をまとめて下の文のA~Dにあてはまる言葉を文中から抜き出して記しなさい。

 この文章は【 A 】と【 B 】という具体例を用いて、日本人と西洋人の【 C 】の違いを主張している。とくに【 D 】人の【 C 】を高く評価している。

 A…鹿おどし B噴水 C感性 D日本



 



段落要点…日本人は形のないものを恐れない感性を持っている。「鹿おどし」と噴水は、見えない水と、目に見える水とも対比されよう。「鹿おどし」は日本人の心にぴったりした、水を鑑賞する最高の形だ。😄


『水の東西(山崎正和) もっと、深くへ !』でテーマに迫りましょう。こちらです。

『水の東西(山崎正和) 問題』はこちらです。


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