「若紫の巻」とは
『源氏物語』の五巻目となる巻。源氏は18歳、紫の上は10歳の少女、藤壺は23歳、正妻の葵上(あおいのうえ)は22歳。
源氏は病気治療のため、加持(治療法の一つ)を受けに、北山の聖(ひじり)を訪ねた。その際、ひそかに恋慕する継母に当たる藤壺に面ざしのよく似た美しい少女(紫の上)を見出した。少女は、実は藤壺の姪(めい)にあたり、母親はすでに亡くなっていて祖母の尼君に育てられていた。京に帰った源氏は、病で里下がりしていた藤壺と夢のような逢瀬をとげた。やがて藤壺は懐妊し(後に冷泉帝となる)、罪の深さに怖れ源氏との再度の対面を拒(こば)んだ。満たされない源氏は、尼君の死によって父兵部卿宮(ひょうぶきょうのみや)に引き取られそうになっていた少女(紫の上)を、ひそかに私邸二条院に迎えとろうとしています。
ここは、少女の庇護者である祖母の尼君は、その後山寺を去り、京に住まっていたが、病(やまい)重く、明日をも知れぬ身でありました。源氏は尼君に少女を手元に引き取りたい旨を伝えており、その尼君を見舞う場面です。
「たづの一声 1/2」の要旨
山寺の 尼君は、京に住まいしていた。源氏は少女(姫君)のことで時々手紙をやったが、話は一向に進行 進展せず、一方 、源氏の心は 藤壺懐妊のことで以前にもまして煩悶(はんもん)の毎日が続いてた。秋も終わりの頃、 夕暮れの時の時雨の中、源氏は六条京極あたりのあたりへ出かけたが、 途中で尼君の病気のことを供の惟光から聞いて見舞いました。尼君は以前から 源氏が希望していた少女養育の件を病の床から頼んだ。
源氏、尼君を見舞う
藤壺懐妊(かいにん)の報におののく源氏は以前にも勝る煩悶(はんもん)の毎日を送っています。忍びのお出まし も「かろうじて思い立ち給える」ほどで、じっと事態の推移を見守っています。そんな源氏が北山で見初めた藤壺によく似た少女(紫の上)の祖母尼君の病気を偶然見舞うことになります。藤壺のことを思えば、心に浮かぶ尼君の養育する姫を自分の手元で養育したいと思う気持ちもあって六条京極あたりへのお出ましも、わざわざの病気見舞いという形をとって予定変更されています。尼君をはじめ 侍女たちの源氏の見舞い対する驚きや恐縮ぶりは大変なもので、南の庇を引き繕って そこに源氏を迎えるさまなどには、その様子がよく現れている。
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源氏物語「たづの一声 1/2」問題解答(解説)
問1 しぐれ
問2 家
問3c「あり」の丁寧語で惟光が源氏に敬意を表す。
g謙譲の補助動詞、「思いひ立ち」の謙譲表現となる。源氏が尼君に敬意を表す。
h尊敬の補助動詞、源氏が尼君に敬意を表す。
k「言ふ」の謙譲語「聞えさす」の未然形、尼君が源氏に敬意を表す。
l名詞「思ひ」の尊敬語、尼君が源氏に敬意を表す。
m「あり」の丁寧語、尼君が源氏に敬意を表す。
問4d取次を依頼する e取次をする fきまりが悪い(自分の言動を、そばにいる人がどう思うかと強く意識される気持ち。) j臨終 死に際
iなやむ(全文の「なやませたまふ」)
問5①見舞いましたところ(「とぶらふ」には、見舞うの意味あり。「はべり」は丁寧の補助動詞。「しかば」は、過去の助動詞「き」の已然形+接続助詞「ば」→確定条件=~タトコロ。)
③すっかりお弱りになられましたので (「むげに」は、「せたまへ」は最高敬語。「たれば」は、完了の助動詞「たり」の已然形「たれ」+ 接続助詞「ば」→確定条件=~ノデ
問6②惟光が六条京極あたりの大納言の家 を見舞ったところ、尼君がひどく衰弱なさっていたこと(直前の、惟光が源氏に報告した内容。)
④せめて(わざわざのお見舞いを)恐縮に思う気持ちだけでも(申し上げねば)と思います(「だに」は副助詞で最小限の限定、セメテ…ダケデモ、直後に「聞こえむ」を補って訳している。「とて」は格助詞、…ト思ッテ。源氏のわざわざの見舞いに恐縮する気持ちを言わんとすることば。)
問7(1)「たまへ」は謙譲の「たまふ」の連用形、尼君から源氏へ敬意を表す。
【謙譲になる「給ふ」】
①下二段活用
②補助動詞のみ。(知覚動詞「思ひ」「知り」の後。)
③敬意の方向が、丁寧語と同じになる。話し手(書き手)→聞き手(読み手)
(2)られ(自発の助動詞「らる」自発+ぬ(強意の助動詞「ぬ」終止形+当然の助動詞「べし」の連体形。
(3)極楽に往生する道の障害
問8 平安時代中期・紫式部・彰子・藤原道長
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