「枕草子」とは
現在、私たちが小説や評論とよんでいるものが、昔から存在していたわけではない事情は、『かぐや姫のおいたち(竹取物語) もっと深くへ! 』(こちらを)で少し詳しく書きました。
平安時代の初期(1200年ほど前)に、漢字を元にしてひらがな・カタカナが発明され、そうして初めて、私たちが日常使っている言葉で、心情や情景の描写ができるようになっていったのです。このようにして、かな文字で書かれる物語という新しい文学に発展していきました。文学史的には、こうして、架空の人物や事件を題材にした〈作り物語〉(「竹取物語」など)と、当時の貴族社会で語られていた歌の詠まれた背景についての話を文字化した〈歌物語〉(伊勢物語)の二つが成立したとされています。
さらに、見聞きしたことや、自然・人事についての感想・考え・評価などを自在に記す〈随筆〉として、千余年ほど前清少納言によって『枕草子』が書かれた。中宮定子に仕えた宮中生活の体験や、感性光る「ものづくし」を自在に著わした「をかし」の文学と言われている。『枕草子』も、日本人独自の感受性、ものの見方、思考の組み立て方の原型の一つとなっているといえます。
INPRESSION & COMMENTARIES
春は、鶯の鳴く音も桜の落花も梅の香もいいけど、夜明け前からの東の山の光景の移り変わりがすごくすばらしい…!「枕草子」の冒頭とした、作者の心意気と自負心があふれているように感じます。たとえば、春は「桜」と「雪」を関連付けるとか、「鶯」の鳴く音を待つというような、当時の通念的常套的な観点を超えて、作者独自の美意識の主張がなされています。
夏の夜がいいと言ったのは、必ずしも月があるからではない…闇であっても夏は夜がよい…それは「昼間のひどい暑さ」から開放されるから、なんかじゃない!…漆黒の闇の中を彷徨(さまよ)うように点滅しながら舞う蛍の光が! …雨がザアザアと降っているのもいいなあ…。
「烏(からす)なんて…?」と思われているけど、秋の夕暮れの茜(あかね)色に染まる空を、三々五々ねぐらへ急ぐのなんかを見ているとしみじみとした気持ちになる。
冬は、雪が降っているのも、霜が降りているのもいいけど、やっぱり早朝のピリッとした冷気の中、炭を持って渡殿(わたどの)なんかを通っているのなんかがいい。
作者独自の観点、風景と時間の切り取り方、着目の仕方が、読む者に新しい発見をさせ、感性をリフレッシュしてくれるように思わせます。1000年以上前、一人の女流に書かれた随筆 ! 世界に他に類例がないほど高度で洗練された文章の綺羅星(きらぼし)!
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