『更級日記』とは
作者は菅原孝標女(すがわらのたかすえのむすめ)。『蜻蛉日記』の作者藤原道綱母(ふじわらのみちつなのはは)は伯母にあたる。『源氏物語』成立後50年後位に成立。作者(菅原孝標女)が、その晩年(50代前半)に、少女時代の回想で始まり、成長して宮仕えをし、結婚し、親しい人との死別など女性としてたどってきたさまざまな経験を記しています。
今から960年ほど前に書かれた作品です。
門出/物語読める都へ ! (更級日記) 本文/現代語訳はこちらへ
10才の時父の任国上総(かずさ)の国(=現在の千葉県)に下り、13歳の時帰京することとなったが、ここはそのころの回想となっています。「あづまぢの道の果て」とは、常陸(ひたち)の国(今の茨木県)を言い、そこよりもっと奥の国と言われています。実際は、上総の国(今の千葉県)でした。常陸の國とかさらにその奥の国とは当時の都人(みやこびと)の感覚では、言葉も通じない、仏教も十分布教していないような、文化程度が低い、異国同然の東国(とうごく)の地。まず、そこで成長した人は無教養でさぞみすぼらしくあっただろうと回想しているのです。
そんな少女が物語にあこがれていて、姉・まま母(一夫多妻の時代、血のつながりのない母は周辺にごく普通)から物語の断片を聞くにつけても、ますます読みたい気持ちがつのる。現代のようにアニメ・動画などのような娯楽はない時代です。作者は薬師仏を作って(紙のようなものでか、あるいは、親などに頼んだ?)物語が手に入る都に帰れるよう祈ったかいがあり(と作者は思っている)、十三歳の九月三日に都に向かって門出する。門出の日、車に乗ろうとして、車から後にする空き家に薬師仏が見える。置き去りにする哀れさで泣かれてしまったと述べられています。
物語へのあこがれる経緯や、薬師如来の仏像を残していく悲しみなど、単純ながら息の長い文章が、ロマンティックな少女の、果てしなく続く夢幻的な心境を説得あるものとしているように思います。
これから都(京都)へ旅の記録、すなわち、紀行文となりますが、多く虚構が含まれているにしろ、作者の記憶力と想像力に驚嘆してしまいます。
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【参考動画】更級日記
門出・憧れ/物語・源氏の五十余巻
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門出/あこがれ 問題解答(解説)
問1 入りぎはの
(「の」が同格の格助詞。「日の入りぎは」と「いとすごくきりわたりたる」が同じ資格で「に」を伴い、「車に乗るとて」を修飾する用法」。)
問2 ① どうにかして見たいものだ
(「ばや」は願望の終助詞。「いかで」は願望の語と呼応して、ナントカシテの意となる。)
② ますます好奇心が募るけれど
(「いよいよ知りたい気持ちがつのるのだが」なども。「ゆかしさ」は、見たい・聞きたい・知りたい気持ちのこと。)
問3 解答例…(仏前に上がる前なので)身を清めるため
(神社の入り口でもやっていますよね。)
問4 e
(まず、④は接続からは判別できないので、前後の文意から伝聞の助動詞と判断します。aは形容動詞「にくさげなる」の活用語尾。bは断定の助動詞。cは断定の助動詞、存在を表し、~ニアルの意になる用法。dは動詞「なくなり」の一部。fは動詞の「なり」。eが、完了の助動詞「ぬ」の終止形に接続しているので、伝聞の助動詞「なり」と確定できます。用言・助動詞の知識が無いと→???となる問です。でも、頻出問!)
a.Q
1.解答例…物語がたくさんあるという都へ早く行かせて欲しいという、筆者の願いをかなえてくれた。(41字)
2.(1) けむ けり
(2) わが思ふままに
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