『徒然草』とは
兼好法師によって鎌倉時代終わりころに書かれた。『枕草子』(清少納言)・『方丈記』(鴨長明)と併せて日本三大随筆と言われています。
自然、社会、人間のありように対する思いを述べた随筆で、さまざまな角度から斬新(ざんしん)な感覚で切り込んだ作品。王朝文化へのあこがれ、有職故実(ユウソクコジツ。礼式・官職・制度などの由来など)に関する心構え、処世訓、自然美の新しい見方など、素材・対象は多彩を極めています。
仏教的無常観・老荘的虚無思想・儒教的倫理観が基盤にあるとされ、また、作者兼好法師は和歌四天王の一人に数えらたように、美的感受性にも優れています。
『徒然草』は、「ある人、弓射ること習ふに」や「高名の木のぼり」を読むと人生上の教訓集と見えますが、「神無月のころ」や「花はさかりに」は兼好の趣味論にも見えます。さらに、この「五月五日、賀茂の競べ馬を」や「大事を思ひ立たん人は」は死生観や無常観を論じるものにも見えます。
加藤周一さんの『「心に移りゆくよしなしごと」を次々と書きとめることで、多面的でしばしば相反する思想を一冊の小著にまとめあげた』という見方が、私には最も納得されます。
自慢のつもりが恥をかくことに?
ここでも主人公は「上人(しょうにん=僧に対する敬称)」、仏道が盛んな時代で僧侶は身近なものであったわけです。「聖海上人」と実名も明かされています。人々もしばしば寺社参拝していたのです。「出雲神社」という由緒ある神社です。
その出雲神社の社殿の前にある獅子と狛犬(の石像)が背中合わせになっているのを発見して、いたく感動する。それでやめておけばよかったのに、人々が共感したことにも意を得て図に乗って、自分の着眼の良さをもっと誇示しようと深入りして、そこの神官を呼んで念を押したため、かえって、自分の間違いが明確になり恥をかく結果となったわけです。
兼好の感想は「上人の感涙いたづらになりにけり。」からうかがうことになる。上人は恥をかき、人々も上人に同意しているので上人のことを笑うことができず、苦笑するしかなかった。そんな面白い話として兼好は記しているのでしょう。
物事をわきまえた見識ある優秀な人と一目(いちもく)も二目(にもく)も置いていた人が、ふとしたことで、根拠にしている知識が意外と浅薄で、しかも単純な理屈で組み立てられているのでないか、いや、だからこそ明快で論理的に見えていたのではないかと思わせられる経験が何度もありました。そんな連想を、ふとしてしまうお話でもあります。
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丹波に出雲といふ所あり 問題解答(解説)
問1 a領有する 治める (「知事」の「知」の意です。)
c不思議に思う 不審に思う
d知りたいと思う 知りたがる
問2 eは断定の助動詞「なり」の連用形。gはナ行変格活用の動詞「往ぬ」の連用形「往に」の活用語尾。hは完了の助動詞「ぬ」の連用形。
(← eは 【に(+係助詞+)あり・侍り・おはす → 断定の助動詞「なり」の連用形】のケース。 gは 【「往に」で一語ととらえる】のケース。hは 【にき・にけり・にたり → 完了の助動詞「ぬ」の連用形】のケース。)
問3 「聞く」の謙譲語で、 聖海上人が神官に敬意を表すもの。(← 謙譲語は、行為の受け手に敬意を表すこと、改めてインプット。)
問4 さがなき童べどものつかまつりける (16字)
問5 権威を無条件に信奉する単純な性格の人間。
(← なんでもないことにすぐに感激する単純な性格でもいいでしょう。周りの人が感心しているところでやめておけばよかったのに、人々が共感したことにも意を得て図に乗り、自分の着眼のよさをもっと誇示しようとして、逆に、自分の間違いが明らかになり赤っ恥をかいた、というお話。興に乗りすぎるという観点からは、仁和寺の法師が調子に乗りすぎて鼎〈カナエ〉を頭にかぶり、どうやっても抜けなくなった話〈53段〉と共通する、兼好らしいシニカルな話題ともとらえられるでしょう。)
問6 兼好 ハ
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古典 多読 聴くだけ古文
徒然草 丹波に出雲といふ所あるに
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