『徒然草』とは
兼好法師によって鎌倉時代終わりころに書かれた。『枕草子』(清少納言)・『方丈記』(鴨長明)と併せて日本三大随筆と言われている。仏教的無常観・老荘的虚無思想・儒教的倫理観が基盤にあるとされ、また、作者兼好法師は和歌四天王の一人に数えらたように、美的感受性にも優れている。
『徒然草』は、「ある人、弓射ること習ふに」や「高名の木のぼり」を読むと人生上の教訓集と見えますが、「神無月のころ」や「花はさかりに」は兼好の趣味論集にも見えます。さらに、この「五月五日、賀茂の競べ馬を」や「大事を思ひ立たん人は」は死生観や無常観を論じる評論集にも見えます。
加藤周一さんの『「心に移りゆくよしなしごと」を次々と書きとめることで、多面的でしばしば相反する思想を一冊の小著にまとめあげた』という見方が、私には最も納得されます。
猫またに襲われた法師
奥山に猫またといふもの(徒然草) 原文/現代語訳はこちらへ
イギリス、スコットランドのネス湖で目撃された未確認動物は「ネッシー」と呼ばれ、未確認動物の代表例として現代でも議論されているのは知っている人も多いと思います。
ここでは、鎌倉末・室町期、「奥山に猫またがいて、人を食べるそうだ」、「山でなくても、猫が年をとって猫またとなり人を食べるのがいるらしい」という話題。
連歌(こちらを)師でもある法師が、会が終わって夜道を帰ってくる。猫またを恐れていた僧は、気をつけねばと思う。現代とは違って街灯などなく、曇っていたりするとほぼ闇である。すると、いきなり法師に猫またが飛びつくと、首のあたりを食いつこうとする。僧は、肝をつぶして小川に転げ落ちて、「助けてくれ、猫まただ !」と悲鳴を上げる。
作者は、猫またの恐ろしさと、夜道を歩く法師の心理を簡潔に語り緊迫感を演出する。また、助けられた際の様子も、具体的でリアルかつ簡潔に書かれている。
うわさを真に受けたり、飼い犬に飛びつかれたと気づかずに正気を失う、精神修行に欠ける人物として、皮肉な視点で語られているようです。
奥山に猫またといふもの(徒然草) 原文/現代語訳はこちらへ
奥山に猫またといふもの 問題解答(解説)
問1A… 打消の助動詞「ず」の已然形
B… ラ行変格活用の動詞「あり」の連体形「ある」の撥音便「あん」、撥音の無表記 + 伝聞の助動詞「なり」の連体形
問2 法師
(「何阿弥陀仏とかや、連歌しける法師の、行願寺のほとりにありけるが、聞きて」の「の」が同格。「何阿弥陀仏とかや、連歌しける法師(何阿弥陀仏とかいって、連歌を職業にしていた僧)」と「行願寺のほとりにありけるが(行願寺のあたりに住んでいた〈者=法師〉が」が、同格で「聞きて」にかかっていく用法。
問3D… いきなり飛びつくと同時に(「やがて」は、時間的にも状態的にも連続することの意の副詞。そのまま・さっそく・すぐに。「ままに」は、すると同時に、するや否や。)
E… これは、どうしたことだ(こ〈名)+は〈係助〉+いかに〈形動・用、副でも〉)
問4 猫またの噂におびえる僧が猫またに襲われやっと助かるが、それは飼い犬だった。(37字)
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