中島敦
『山月記』 後編
exercise
山月記(中島敦)後編 exercise 解答/解説
解答
問1①薄幸 ②潔 ③損 ④暴露(曝露) ⑤悔 ⑥優
問2 七言律詩
問3a 逃るべからず
b 誰がはむかうだろうか。…11字( 誰もはむかうものはいない。…13字)
c殊類 d鬼才(「才能」は2点) e 全く、 ~ まった
f涙(のため) g利己(的)[ または、身勝手 ]
問4 イ 豪 ロ 嘆じ ハ 伍する ホ 弄し
ニ 刻苦 ヘ空費 ト 地に伏して チ イ ハ
問5A(解答例) 自分の才能に自信を持ちきれないので、先生に教わったり、詩を志す友と交際して才能を磨くことを避けるなど自分が傷つくことを過敏に恐れ、同時に、それとは裏腹に才能への自負から、凡人とみなす人たちを見下しお高くとまっていたこと。
B(解答例) 虎になることは人間としての理性をなくし、獣の本能に支配されて行動することとなる、という意味で。
C(解答例) よりいっそう嘆き悲しむこととなる。(17字)
D(解答例) 妻子に李徴は死んだと告げ、妻子の生活を支援することとなる。(30字)
解説
問1 漢字をないがしろにしないでね。確実に得点できるジャンルだよ。テスト勉強をはまず漢字から始めよう。それもただ漢字を覚えるのではなく、前後のコンテクスト・内容を把握しなが進めてね。問2 漢文の知識が必要。「絶句」「律詩」、それぞれ五言と七言があり、問4のイで出題されている押韻についても、改めてインプット(五言→偶数句末、七言→一句末+偶数句末)。
問3 a これも漢文の知識が必要。日本語の助詞・助動詞に当たる漢字はひらがなで。「不」「可」は助動詞だけど。しかも、助動詞は活用するから活用も覚えておかないとね。
b これも漢文の知識が必要。「誰カ…(セ)ン(ヤ)」は代表的な反語の句法。「誰が…するだろうか。いや、誰も…しない」。「敵」は「かたき・手向かうべき相手」がもともとの意味だが、「刃向かう」という意味も持つ。字数制限に注意。
c 「異物」は「異族・鬼神・獣」の意味。ここでは、虎となったことを「為異物」と言っている。一句目の「成殊類」と同意義。「殊類」は鬼神・化け物など、人間からみて異質なもの。「虎」というアジアではもっとも獰猛で恐れられている野獣に成り下がってしまったニュアンスが2つの熟語で表現されている。「虎」以外のたとえば「猫」になったのではではその悲劇性が薄まるよね。
d 「珠」「瓦」が文脈上二項対立で使われている。「珠」は美しいものの例えとして使われるのが普通(辞書上の意味)だが、ここでは、「優れた才能の持ち主」という意味で用いられている(文脈上の意味)。「瓦」は「才能無き平凡な者たち」(凡人)の比喩。「鬼才」とは「人間のものとは思われないほどすぐれた才能(の持ち主)」の意。
e 直後の「それ」と同内容。指示語の指示内容は、前、前と遡って捉えるのが原則。直前に、才能へ自信のなさから気のきいた言葉を口にして有能らしく見せかけ努力を怠っていた自分と、努力して大成した詩人を二項対立で述べている。そんな李徴のあり方を「30字以上35字以内の一続きの語句」という制限にかなう箇所は…?と考えていく。「空費」はムダにつかうこと。
f その前の、「吼える」「悲しみ」「苦しみ」「嘆いて」→「ぬれた」(チェック)から「涙」と考える。
g 自己中心的に考えたり、行動したりすることを、漢字2・3字で…?
問4イ 五句と六句が対句になっている。五句で、自分が獣に成り下がってしまったことが述べられ、六句で、李徴とは対照的に袁参が高官にまで出世したことが述べられている。また、七言なので、1・偶数句末が押韻と考える。ここでは、2、4、8句末のそれぞれ「逃(トウ)」「高(コウ)」「嘷(コウ)」から、漢字の意味と音の共通性を考えて正解を確定。
ロ 李徴が獣となってしまった嘆き(=「薄幸」)を「人々」も同情して嘆いた。「た」は連用形接続。
ハ 次次文に、同じパターン「碌々として瓦に伍することもできなかった」とある。「伍」は仲間に入るの意。直後に「こと」があるので連体形。
ホ 才能に自信がないから、気の利いた言葉を口にして才能がある者のごとく見せかけていた。「弄」はもてあそぶ意。
ニ 「あえて( ニ )して磨こうともせず」と同内容の別表現が、前文に「進んで師に就いたり、求めて詩友と交わって切磋琢磨に努めたりすることをしなかった」とある。「刻苦」はひどく苦労するの意。
ヘ 取り戻すことができない「過去」=「臆病な自尊心と、尊大な羞恥心」から才能を磨くことなく終わってしまったを嘆いている言葉と捉えて考える。
ト 「天に踊り地に伏す」は、飛び上がったり、ひれ伏したりするという意味の対句の慣用表現。インプット!
チ 李徴の告白の主旋律…自分の内面や行動をすべてネガティブに捉え語っていることから…。
問5A HPの問1と同趣旨の問。これも文中の語・語句をいい加減にして読み進めていたのでは、答えられない。直前に「おれは詩によって名を成そうと思いながら、進んで師に就いたり、求めて詩友と交わって切磋琢磨に努めたりすることをしなかった。かといって、また、おれは俗物の間に伍することも潔しとしなかった」とあり、直後に同内容の別表現として、「己の珠にあらざることを惧れるがゆえに、あえて刻苦して磨こうともせず、また、己の珠なるべきを半ば信ずるがゆえに、碌々として瓦に伍することもできなかった。」と、行為とその内面が比喩を用いて語られている。「自尊心」「尊大」「切磋琢磨」「碌々として瓦に伍する」の辞書的な意味、文脈上の意味を、もう一度確認。「珠」「瓦」が何を比喩するのか、しっかりとらえる。これも出題されるよ。
B 「酔う」とどうなるかな…?訳の分からないことをわめきたてる、暴力的になる、やたらとからむ、ベンチで寝込んでしまう…色々思い浮かんだと思うけど、要するに理性を失ってしまう状態になっているんだね。「酔狂(酔って常軌を逸する状態になる)」という熟語があるよね。インプット! 虎=獣になることとの共通性は?…と考える。
D 死んでしまったことと虎=獣に成り下がってしまったこととを比較して、李徴の妻子の嘆き悲しみはどう違ってくるのか、と考える。
C これもHPの問4と同趣旨の問。「意に添う」とは、希望に応じるということ。李徴は何を希望したのかな…?前段に「お別れする前にもう一つ頼みがある」とある。早とちりしないで正確に読もう。〔ここでは、問題本文の都合で李徴の作った漢詩を伝録することは除いて考える。〕前段末の「おれはすでに死んだと彼らに告げてもらえないだろうか。決して今日のことだけは明かさないでほしい。厚かましいお願いだが、彼らの孤弱を哀れんで、今後とも道塗に飢凍することのないように計らっていただけるなら」に着目。
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