こころ(夏目漱石)1/4 2/4 もっと、深くへ !

 こころ(夏目漱石)1/4 2/4 
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 「こころ」て、かなり不可解な小説…友情を裏切り恋愛をとったエゴとその悲劇がテーマになっているとされていますが、もっと、深くへ !



Aoi Bungaku Capítulo 7 - Kokoro (Parte 1)
2012/07/29

「私」とは

 「先生」(遺書の「私」)は、当時日本に一つしかなかった帝国大学(現在の東大の上位10パーセントに相当するのでは)を卒業してスーパー・エリートになるはずの人。なのに、卒業後は仕事に就かず気ままに暮らす高等遊民、近代文学に常連の登場人物です。多分現在の貨幣で言えばウン億円(?)は預金があり、その金利で余裕で生活していたのでしょう。ですが、両親は亡くなり、叔父からは遺産を騙し取られ人間不信になった孤独な「先生」。

 この「先生」、漱石が生きた明治という時代の生み出した新しいタイプの人間(現代的に言うと近代的自我)のメタファとして描かれているようです。士農工商という身分制度や儒教的封建的な血縁・地縁・因習から解き放たれて、自由・独立・自主的な自己を手に入れることができた。進歩主義者は人間はより幸福に近づいたと言うでしょうが、漱石はまったく別の見方をしているようです。得るものがあれば失うものがある。封建的な制度やモラルや束縛からの解放は、そのことによって人は所属する場所を失い、人とのつながりを失い、どこからどこへ向って、何を目的に生きればよいのか分からなくなった、人間のアトム化・根無し草化をもたらしたのだと。「先生」(遺書の「私」)はそんな明治が生み出した新しい人間像として描かれているようです。そしていわゆる近代的人間(自己)新たな困難な課題を負うことになったのだと暗に語っているようです。

(追記2018.7.24 落合陽一さんの『日本最高戦略』の「日本にはカーストが向いている」から引用します。
 《カーストというと、悪いイメージがあるかもしれませんが、インド人にとっては必ずしも悪ではありません。…なぜカーストが幸福につながるかというと、カーストがあると職業選択の自由はない反面、…生まれたときから、どういう層の人々と結婚をするのかがわかっているし、誰と結婚するかも大体わかっている。また、未来において自分の子供が自分と同じ職業を得ているだろうとわかるからです。それが保証されていることは、実は「自由がなく不幸」ではなく「安心かつ康寧」なのだ…。
 上記のことを理解する手助けになるのでは。こんな観点も知っていれば、世界の別の見方ができると思います。また、この本でイデオロギーで硬直した歴史観で語られる日本の歴史を、落合さんならではの斬新で独特の視点でとらえられていて、とても刺激的でした。)

「私」が「お嬢さん」を失いたくなかったわけ 

 「先生」(遺書の「私」)は「お嬢さん」のどこに惹かれたのだろうか…?お琴もお花もあまりうまくないと「私」は観察していますが…。そして引き続いてKも…?

 ひとは他人が持っているものは自分もそれが欲しくなる。他人が持っているものがよく見える。他人が欲しがると貴重なものと思いだす。特に身近な他人だといっそうそういう心理になるもの。「先生」(遺書の「私」)はお嬢さんとKが親しくしているのを見て嫉妬する。お嬢さんはもともと自分のもの!どういう手を使っても自分のものにしよう!!!そしてその結果、煉獄の苦しみを味わわなければならないこととなる。それが人の〈こころ〉というもの…?




こちらは「ラジオドラマ」
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夏目漱石「こころ」(ラジオドラマ)
2014/01/16
夏目漱石「こころ」 ■作品紹介 夏目漱石晩年の代表作。 恋愛と友情の狭間で葛藤し、 利己主義化していく男の『心』を描く。 ■出演 ・私:内匠靖明 ・K:出先拓也 ・奥さん:早川昌佐(同人舎) ・お嬢さん:中森朱音 ※劇中、使用している音楽・効果音、画像は全て著作権フリーの素材です。


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1/4 解答(解説)

問1 「彼の魔法棒」とは、Kのお嬢さんに対する恋心の告白。「化石された」とは茫然自失の状態のこと
(←まるで予期していなかった衝撃的なことに見舞われ(=魔法棒のため〉、身動きすることも思考することもできない状態にさせられた(=化石された)、と欧米文調の比喩によって、印象深く表現している。この問出題されるよ。)。

問2 Kの思慮深く、確かなこと動かしがたいことしか口にしない元来のあり方から、Kの「お嬢さん」への恋心は深く重いもので、とうてい「私」はそれを覆すことはできないという気持ち)
(←「平生からなにをしてもKには及ばないといふ自覚」(下 先生と遺書)という、Kに対して抱いている劣等感も実は存在すると考えられる。)

問3① Kの恋心を断ち切らせるのにどう対処すればよいか知るために、Kが恋心を打ち明けた理由や、恋愛などとは無縁であるはずのKがどうして恋心を抱くようになったのかなど多くの知らなければならないことがあるということ(考え)。
 ② Kの恋心を断ち切らせることはとうてい不可能なことで、「私」はKによって永久に苦しめ(祟られ)られるだろうということ(考え)。

問4 Kが「お嬢さん」について「私」がますます不利になるようなことをたくらんでるのではないかと思われてならなかったこと(思い)。

問6 Kの「お嬢さん」への恋心を肯定するもの。 

1/4 advanced Q 

1.解答例…D「平生の彼」は、恋愛などの世俗的なことに無関心なKのこと。F「彼の平生」は、自分の信じたことは他人の目や考えなど気にしないで突き進んでいく、強い意志と実行力の持主であるKのこと。
D「平生の彼」は、直前の「どうして打ち明けなければいられないほどに、彼の恋がつのってきたのか」と対照的な内容となる。直後の「私は彼の強いことを知っていました。また彼のまじめなことを知っていました」ともある。冒頭にも、「奥さん」「お嬢さん」の話をするところで、俗世間的なことに関心を持たないKの元来の性格が語られていることも考えてまとめる。F「彼の平生」は、直後の「彼の天性は人の思わくをはばかるほど弱くでき上がってはいなかったのです。こうと信じたら一人でどんどん進んでゆくだけの度胸もあり勇気もある男なのです」に着目してまとめる。)

2.解答例…恋のライバルとしてKを恐れ、脅える意識。
(20字。前段で「私」は、Kについて、「解しがたい男のように見えました一種の魔物のように思えた…私は永久彼に祟られたのではなかろうかという気さえしました」とエキセントリックな心理に陥っている。そういう心理に陥っているのはなぜか…。「お嬢さん」をめぐって、「私」にとってKはどんな存在になっているのか…?)


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2/4 解答(解説)

問1 「理想」とは、道のためにはすべてを犠牲にして精進すること。「現実」とは、(道の妨げになる)恋に落ちたこと。
(←「精神的に向上心のないものは馬鹿だ」とは、言い換えれば、信条に基づいて向上しようとすることを忘れた者は人間失格だということ。つまり、道のためすべてを犠牲にして精進せよ→道の妨げになる恋を断ち切れ、ということとなる。)

問2 今までの(道のためにはすべてを犠牲にするという)生き方を捨てて、恋心を積極的に肯定することにした(と思った)。

問3 どんなずるい手を使ってでも自分の利益を守ろうとする狡猾で卑怯な「私」のようす。[私」のずるい意図に気づかずに、苦しい内面をさらけ出す、正直で善良なKのようす。
 
(←ずるがしこくて残酷な狼疑うことを知らない純粋で正直な羊欧米風の比喩が用いられている。また、直前の「…あったなら…かもしれません。」(仮定法)や「あまりに…」(too…to…)の繰り返しも欧米文風の言い方。)

問4 道のためにすべてを犠牲にするという生き方を貫くために、お嬢さんへの恋心を断ち切るしかなく、また、そうできる強い意志力(強情と我慢)を持っていること。


1/4 advanced Q 

1(1)解答例…道のためにはすべてを犠牲にできる者
(17字。「道のためにはすべてを犠牲にすべき」が次段・次次段・次々次段にもある。次段の「精進」をキー・ワードととらえ、考える)

 (2)Kの前に横たわる恋の行く手をふさごうとした(21字)


 (3)お嬢さんを思っていた

 2. 解答例…親友を心から思う忠告に見せかけて、実は、自分の利益を守ろうとする汚いものであるという意味で。
(46字。「卑怯」とは、正々堂々としていないこと。正面から事に立ち向かう潔さがないこと。卑劣。 「敵に後ろを見せるとはーだ」 「 ―な手段を使う」などと使われる。
 本文では、キー・ワード「待ち伏せ」「だまし討ち」「つけこんだ」「彼を打ち倒そうとした」に着目。「私」の見せかけ(親友として相談に乗る)と真の意図二項対立でとらえる。)


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