世界中がハンバーガー(多木 浩二)もっと、深くへ! & 解答(解説)





論の組み立て

 煮詰めきれないままに書かれた文章に思えます。図式風に整理すると、次のようになります。

  結論 →ファースト・フードの席巻は世界中の都市とそこに住む人々の文化の固有性を希薄化(きはくか)させ無国籍化する。

   結論の外在的背景 →(国家を超えて増殖しようとする)資本の力の存在。

   結論の内在的要因 →家族の絆(きずな)の希薄化(きはくか)、仕事に忙しい人々の時間節約志向などの文化や人間の集合状態の変化の存在。
 

本文、読んだけどいまひとつ…?という人は、この図式から読み直してみてください。そして、最後のほうにある

 

   「ネーション固有の文化の希薄化

   「一つの均質化する力として割り込み、かつローカルな都市を世界的な規模にまで広がった同一の網目に組み込む

   「都市の遊民になっていく」「我々自身をいつのまにか世界化している

 

など難しい言い回しの箇所を自分のことばで翻訳(パラフレーズ)して整理してみてください。端的に言うとファースト・フードが世界各地の地域に根ざした文化の固有性を失わせ、人々のつながりを一層薄いものにしてバラバラにしてしまうと危惧するものと言うことができます。

 

 新しいモノやサービスやシステムが出現する時、「古き良きもの」の衰微を心配するパラダイムととらえてもいいでしょう。

 

資本について

 資本の力について。この問、資本」は「ステート(国家)」を超えて利潤を追求するものということを知っていれば理解しやすいでしょう。

 「資本主義」とは、少し難しいのですが、経済の仕組みの一種で、資本の運動が社会のあらゆる基本原理となり、利潤や余剰価値を生む体制をいいます。社会に貨幣を投下し、投下された貨幣が社会を運動してより大きな貨幣となって回収される場合、この貨幣が「資本」とよばれます。この資本は国家や地域を越えてその増殖を図ろうとします。現在〈2014-2015年〉重要な政治課題の一つとなっているTPPも「資本」は「国家」を超えて活動しようとするということと関連するもの。

 

 

 また、資本主義と社会主義について、現代では社会主義諸国の崩壊でその違いなど意識されなくなりましたが、社会主義はヨーロッパ社会民主主義など政治面でも今でも強い影響力を持っていることも知っていると有益な知識となります。資本主義と社会主義とは生産や経済の体制の違いであるとともに、資本主義は自由・競争・自己責任を重視するのに対して、社会(民主)主義は平等・公正・共同を重視すると理解してもいいでしょう。

 

 フランス人の経済学者ピケティの「21世紀の資本」」が話題になっていますよね(2015年上期)。富の偏在・格差を論じた本です。問4と同様、文章を読み取る際、その前提として幅広い教養が役立つということも知っていてください。

 

 


卓袱(しっぽく)料理。長崎発祥の料理。江戸時代の鎖国体制の中でもいくつかの国と貿易を通して交流があり、日本・オランダ・ポルトガル・チャイナの料理の要素をミックスさせて作られた。和漢蘭(わかんらん)料理とも評されます。
 

食事について

 食事を外食で済ますことが普通という国や地域もあります。その方が買い物したり調理したり片づけしたりする手間が省けるし、費用も余りかからないといいます。

 一方、私たちはふだんは手作りのお弁当や夕飯をいただいてます。

 特別に意識したりしませんが、誰がどのように調理し、どんな容器でどんな盛り付けで、誰とどこで食べているのかは、歴史・風土・習俗・階級・嗜好などがつまった文化そのものなのです。大げさな言い方をすると、食事は空腹を満たし、うまい・まずいとかの快楽を感じるだけではなく、私たちが何者であるのか裏付ける行為でもあり、生きることそのものでもある―「文化」を考える際のパラダイム、または、具体例として知っていていいと思います。小論文でも使えます。







解答(解説)

問1 解答例…世界の各都市を訪れた際は、やはりその都市固有の食堂・レストランなどの施設で、その都市固有の料理の味を味わいたいこと。
(「さ(使役の助動詞)+れる(受身の助動詞)」。「味わことができる」(可能)ではなく、「味わされる」(使役+受身)という言い方には、ありがた迷惑の否定的ニュアンスがあることに気づきましたか?
 「世界中のどの都市に行っても、同じ施設に出会い、同じ味のハンバーガーを味わわされる」の文中の「世界」「都市」「施設」「」「味わう」を使って説明するのが無難でもあり、正解から外れることも避けられます。)


問2解答例…コンビニでは冬におでんを販売するなど季節に合わせて商品を変えている。日本のコンビニでは、おにぎりやすしの弁当など日本特有の商品を販売している。地域によって品揃えが違っている。
(マックのメニューとコンビニの商品を思い浮かべると明らか。)


問3 解答例
  ①都市生活者が、食事のしかたに気軽さを求めるようになったから。
  ②人間の集合状態が変化したから。

(①②の具体相を次段・次次段で述べるという展開になっています。)


問4 都市生活者の食習慣は食習慣は
(前段の関係から何について述べられているのかを考えます。)


問5 解答例…毎日の食事が、公的な饗宴としての意味や、一家がそろって会食する儀礼的な意味を持っていた、ということ。
(前段落とこの段落では、「食事」の持つ「意味」とその衰微が論じられている。論旨が読み取りにくい。「ヨーロッパの場合、かつての宮廷社会でのバンケットの豪奢からも、一家族がそろってテーブルについて食事をする市民的儀礼からも完全に脱出している」「公的な饗宴の意味を希薄にしていく」に着目して解答しています。)


問6 解答例
 ①季節や土地土地の食材・調理法を使った献立。
 ②箸やフォーク・ナイフ、皿、椀、鉢など各土地特有の食べる食器や道具。
 ③レストラン、ビストロ、屋台などの飲食店の形態。
(そのほかに、「いただきます」「ごちそうさまでした」と言う食事の日本の作法レストランでのウエイターの接客の仕方季節や土地による盛り付けの違い土地や料理による食事のマナーなど。シリアルで食事を済ましてしまうアメリカ流…?は食文化といえるのか???)


問7 解答例…アメリカは典型的な「多民族」からなる国家であり、多種な食材・調味料・調理法などが利用され多種多様な「料理」が存在していて、特にこれがアメリカ料理だというものはないので。
(『ハンバーガーを中心とした規格化されたファースト・フードは、たしかにアメリを感じさせる。しかしアメリカナイゼーションにおける「アメリカ」とて実体がないのであるから、一種の無国籍的な食べ物を提供していると言ってよい。』アメリカ化・アメリカの真似をするという時の「アメリカ」は実体を伴わない、虚構に過ぎない。アメリカ的というイメージはあるものの、それが実態を伴わないゆえに、結局どこの国の文化にも所属しない=無国籍という雰囲気を持っていることを言っているわけです。)


問 8(1) 解答例…都市に生活することで、固有の食文化を喪失するとともに、自分と社会との関係が薄くなっていく。
 
(「遊民」の辞書上の意味は「特定の国籍や文化に所属しないような人々」ということ。文脈上の意味は、直前の「かつての食の内容からみると、貧困としか言いようのないメニューに慣れること、あえて社会的関係を破壊しようとしないでも」に着目して理解する。「貧困としか言いようのないメニューに慣れ」とは、食文化の無国籍化ということになり、「あえて社会的関係を破壊しようとしないでも」は、「遊民になっていく」=破壊されていく=バラバラに孤立した個人になっていく、という論理のようです。)

     (2) 
(「感覚的な影響」「…世界のどの都市に行っても、同じ看板、同じ内装、同じメニューのファースト・フードに遭遇する…世界へのくまない分散によって都市の同質性知覚からしみ込ませている。」という表現で言わんとしていることです。「我々自身を世界規模まで広がった網目に組み込む」とは…?具体的には…?世界のどの都市へ行ってもマックがありマックを食べる…そう思うのはふつう…?問3と関連します。)


a.Q 

解答例…多くの人々の考え方や行動に多大な影響を及ぼす点。

メディア」とは、ここではマス・メディア、すなわち新聞・テレビ・ラジオ・雑誌のこと。人々はこれで楽しんだり、ニュースを知ったり、新しい情報を得ています。また、これでイメージ操作されたり、いろいろなことを刷り込まれたりして、判断したり欲望を持ったり行動したりしています。「世界中がハンバーガー」は、巨大なネットワーク・帝国となったファースト・フードも同様な影響力を持って、地域や国々の持つ固有な食文化を失わせ、人々をバラバラにすると主張するものです。
 ちなみに、現在ではインターネットの急速な普及・デジタル技術のイノベーションによって、旧来のメディアの影響力も衰微しつつあるのも事実。これからは何が既成のメディアにとって代わり、私たちに多大な影響を及ぼすことになるるのでしょうか?

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