梶井基次郎
檸檬2/2
exercise
檸檬(梶井基次郎)2/2 exercise 解答/解説
解答
問1a塗 b凝 c澄 d稀 e紛
f握 g快 h尋 i慌 j彩
問2①ロ
②果物は ~ だとか
③ハ
④刺し込んで來る (7字)
⑤ 電燈が放射する鋭い光線
⑥ 熱かった (4字)
⑦イ ⑧ハ ⑨イ ⑩ハ
問3A解答例… 電灯の光が周囲が暗いためいっそう明るく見え、その暗さの中店頭を絢爛と照らし出している眺めの美しさ。B解答例… 夜の暗さの中で電燈の光を浴びて絢爛となっていたこと。
(2) 解答例… 丈の詰まった紡水形の格好のため。
解説
問1 《 略 》
問2① 直後の「一人取り残された」から、一人寂しいさまの意の「ロ ぽつねん」が正解。
② 直後に、独特な陳列の仕方・美しい形や色について具体的に述べられています。
③ 「なつているので」という文節の連用修飾語。よって、正解は「ハ」。
④ 「何が何する。」「何がどんなだ。」「何が何だ。」が文の主要な構造となる。「何が」を主語と呼び、「何する」「どんなだ」「何だ」を述語と呼びます。
➄ 「細長い螺旋棒」は、電燈が放射する鋭い光線の暗喩。
⑥「熱かった」に連用修飾語としてかかっている。
⑦ 檸檬の香気を「胸一杯に」吸うさまから「イ ふかぶか」が正解。
⑧ 「空氣を吸ひ込めば」の「ば」は確定条件、「…スルト」と言い換えることができ、正解はハとなる。残りの選択肢はすべて仮定条件。
⑨ 「そぐわない」とは、ちぐはぐするさまの意。イの「違和感」に近い。ロは「失望感」が、ハは「安堵感」が、ニは「落胆」が不適。
⑩ 「第二のアイディア」=檸檬爆弾で丸善を爆破することを想像して、「私」が感じたこと。「くすぐったい」とは、きまりが悪い、照れくさいの意。ハが正解となる。イは「恐怖」が不適。ロは「滑稽」が不適。ニは「落胆」が不適。ホは「時宜を得た着想だと得意になった」が不適。
問3A 着目点は二つ。第一に、「どうした譯かその店頭の周圍だけが妙に暗いのだ」と「廂の上はこれも眞暗なのだ」と暗さが二重に強調されていること。しかも、同段落で「暗」の漢字を使う語が繰り返し使われています(マークしてみましょう)。第二に、「周圍が眞暗なため、店頭に點けられた幾つもの電燈が驟雨のやうに浴せかける絢爛は、周圍の何者にも奪はれることなく、ほしいままにも美しい眺めが照し出されてゐるのだ」と、「電燈」に照らし出された店先の美しさが語られている点。これを一文にまとめることになります。
B Aを参照してください。
C 直前にその理由にあたることが述べてあります。もともと好きだった檸檬が、珍しく売ってあった。檸檬のどういう点が気に入っているのか…。
D 檸檬を手にしてから「不吉な塊」は緩み、幸福感に包まれ、「輕やかな昂奮に彈んで、一種誇りかな氣持さへ感じながら」と高揚感を感じながら、「その重さこそ常づね私が尋ねあぐんでゐたもで、疑ひもなくこの重さは總ての善いもの總ての美しいものを重量に換算して來た重さである」と実感し、「何がさて私は幸福だつたのだ」と繰り返され、「どこをどう歩いたのだろう」という展開になっています。
E 「逆説」とは、一般的に考えると真理に反するようであるけど、よく考えると真理である説のこと。「急がば回れ(急いでいるときは回り道を行きなさい)」のようなことわざをその例と考えれば理解しやすい。《「不吉な塊」=「あんなに執拗かった憂鬱」が「紛らわされる」こと》と、《「そんなものの一顆」(=檸檬一個)》の関係を考えて、どういう理屈で「不審なことが、逆説的なほんとう」ということになるのか…?字数制限を頭に入れてまとめます。
F 「終始私の心を壓へつけてゐた不吉な塊がそれを握つた瞬間からいくらか弛んで來たと見えて、私は街の上で非常に幸福であつた。あんなに執拗かつた憂欝が、そんなものの一顆で紛らされる」についての「私」の感想として、まず、「―或ひは不審なことが、逆説的な本當であつた」であり、次に、「それにしても心といふ奴は何といふ不可思議な奴だらう」であるととらえます。
G 「檸檬」を手にしてから、「非常に幸福であった」、「身内に元気が目覚めて来た」、「なにがさて私は幸福だった」と述べてあります(本文にマーク)。二十字以内でまとめます。
H 「畫集の重たいのを取り出すのさへ常に増して力が要る…一册づつ拔き出しては見る、そして開けては見るのだが、克明にはぐつてゆく氣持は更に湧いて來ない。然も呪はれたことにはまた次の一册を引き出して來る。それも同じことだ。それでゐて一度バラバラとやつてみなくては氣が濟まないのだ。それ以上は堪らなくなつてそこへ置いてしまふ。以前の位置へ戻すことさへ出來ない。私は幾度もそれを繰り返した」という「私」の一連の行為を超常的な言葉で表現している。何かに操られたように繰り返す、と。
I 「以前あんなに私をひきつけた画本…私は以前には好んで味わっていた」とあります。檸檬を用いて何を試みようとしているのか考えます。
J 「その城壁」=「奇怪な幻想の城」=「本の色彩をゴチャゴチャに積みあげ」(たもの)です。
K(1)Jを参照。(2)「ぎよつと」とは、驚くさま。この後に述べられている、丸善に檸檬をそのまま置いて去り、それが爆発することを想像するというアイディアに自分でぎょっとしているのです。
L この小説のテーマにもなること。「生活がまだ蝕まれていなかった以前私の好きであった所は、たとえば丸善であった。赤や黄のオードコロンやオードキニン。洒落た切子細工や典雅なロココ趣味の浮模様を持った琥珀色や翡翠色の香水壜。煙管、小刀、石鹸、煙草。私はそんなものを見るのに小一時間も費すことがあった。そして結局一等いい鉛筆を一本買うくらいの贅沢をするのだった。しかしここももうその頃の私にとっては重くるしい場所に過ぎなかった。書籍、学生、勘定台、これらはみな借金取りの亡霊のように私には見えるのだった。」と「丸善」に言及されていました。「丸善」は「私」に「えたいの知れない不吉な塊」をもたらすものの象徴となるもの。
また同時に、「丸善」は、「私」がそれに対抗するものとして創り出す美の対極にあるものの象徴ともある。何のために対抗するのか。それは平安を取り戻すため。「私」がそれに対抗するものとして創り出す美とは、「見すぼらしくて美しいもの」、「二銭や三銭のもの――と言って贅沢なもの。美しいもの――と言って無気力な私の触角にむしろ媚びて来るもの」と語られていたことも注目してください。
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