後の頼み/さすがに命は憂きにも絶えず(更級日記)もっと深くへ !

 『更級日記』とは

 作者は菅原孝標女すがわらのたかすえのむすめ)。『蜻蛉(かげろう)日記』の作者藤原道綱母(ふじわらのみちつなのはは)は伯母(おば)にあたります。『源氏物語』成立後50年後位に成立。作者(菅原孝標女)が、その晩年(50代前半)に、少女時代の回想で始まり、成長して宮仕(みやづか)えをし、結婚し、親しい人との死別など女性としてたどってきたさまざまな経験を記(しる)しています。

 今から960年ほど前に書かれた作品です。


夢に阿弥陀仏が現れる

後の頼み/さすがに命は憂きにも絶えず(更級日記)の原文・現代語訳こちら

 作者、50歳過ぎたころ、夫が亡くなりました。自分はこんなふうに長生きしているが、来世は往生(おうじょうできるのか不安な気持ちでいました。しかし、「天喜三年十月十三日の夜の夢に」阿弥陀仏(こちらを)が現れて、「のちに迎へに来む=後から迎えに来よう」と言ってくれました、つまり、極楽浄土に導いてやると言ってもらえたことを頼りと思っているわけです。
 阿弥陀仏が現れた日・時間帯、場所、その大きさや両手のうごき、そしてその声が鮮明に感覚されている。リアルな夢でした。
  ★往生とは極楽浄土(こちらを)往〈い〉って生まれ変わること



甥(おい)の訪問
 そんなある日、夫に先立たれて孤独に暮らしている私を、ある暗い夜、六番目の甥が訪ねて来てくれました。「月も出でで闇にくれたるをば捨てに何とて今宵たづねきつらむ」とひとりでに口に出たのでした。

 月も出ないで真っ黒な夜のおとずれている「をばすて山」(=悲しみに沈んで寂しく暮らしているこのおばの所)にどういうわけで、今宵は訪ねてきてくれたのであろうか(=よく来てくれましたね。)という歌意となります。
 「をばすて山」は、作者の亡き夫の最後の任地である信濃の国の更級郡にあった。『更級日記』という書名の由来とされている。

後の頼み/さすがに命は憂きにも絶えず(更級日記)の原文・現代語訳こちら

後の頼み/さすがに命は憂きにも絶えず 問題へ

後の頼み/さすがに命は憂きにも絶えず 問題解答(解説)

問1 a…   b…    c…    d…    e… 

問2 阿弥陀仏様が極楽浄土にお迎えくださるとはありがたいと思うものの、やはり、不吉で、何となくおそろしいので

(「さすがに」は、そうはいうもののやはりの意の形動の語で、指示語に準ずる語ととらえる。このフレーズは、極楽往生できるのは喜ばしいという感情とともに、それとは裏腹な感情が述べられている。「いみじ」は程度のはなはだしいさまをいい、ここでは「不吉だ」という訳語を当てた。確定条件の~ノデも訳出必要。「阿弥陀仏様が極楽浄土にお迎えくださるとはありがたいと思うものの、やはり」、「不吉で、何となくおそろしいので」、それぞれ3点の配点で。)

問3 ふと目が覚める

問4 

(この暗闇の中をよくまあ訪ねてくれたねえ、が大意。「闇にくれたる」と「をばすて」の掛詞も説明できるように。)

問5 菅原孝標女・平安時代・藤原道綱母・蜻蛉日記

a.Q

1 現世で思うにまかせない状態なのだから、来世でも

(「のちの世」は、将来・後世/死後・来世の意。ここでは来世。「」は添加の係助。来世も現世同様に、という文意。直後の「思ふにかなはず(思うに任せない)」をふまえる。)

2(1)月が出ていて、あたりを明るく照らしている風景。
(古今集の「我が心慰めかねつ更級やをば捨て山に月を見て」=姨捨山に出ている美しい月を見ても慰められない、という歌を踏まえたもの。この古今集歌とは対照的に月も出ていない闇夜の風景が詠まれている。)

 (2)夫を失って悲嘆にくれている人物。
(「闇にくる」は、日が暮れて真っ暗になる、さらに、悲しみや嘆きのため分別を失うの意。ここではその両意で使われている、掛詞に準じる表現。「をばすて」に「叔母」を
掛けている。)

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『古のオタク「更級日記」』
#1推し-ICHIOSHI-】奥友沙絢

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