💥解読💥
岩井克人
「マルジャーナの知恵」
★本格的に取り組もうと思う人向けです。
★「経済」とか「資本主義」とか、むずかしいなという人はまずこちらを。
★プリントアウトするか、解答のみを紙に書くなどして取り組んでみてください😄
教科書の本文を読みながら進めましょう😊
(a.b.c)⇒ aは段落、b はその中の何段目、c はその中の何文目。
1
💥設問💥
(1.1.1) 高度情報社会、脱工業化社会、ポスト産業資本主義―― それをどのように呼ぼうと大差はない。
それが指示するのは何か。ここだけではなく、「1」の全体をよく読んで、まとめなさい。
a ⇒
💥解読💥
a⇒解答例 情報を商品化するという現象によって変貌しつつある資本主義の様相
↑ ↑ ↑
指示語の指示内容は、直前、その直前…とさかのぼり、「こと」などを補うなどして指示語に代入、文意が通るか確認。ただし、要約しなければならなかったり、指示内容が指示語の後にあることもあり、そのケースが出題されることも知っておいてください。ここでは、「指示内容が指示語の後にあり」、かつ、「要約しなければならな」らないケース。
「資本主義がその様相を急激に変貌させている」(1.1.2)が、具体的には、「モノを生産する産業から」(1.1.3)「技術や通信…広告や教育」(1.1.3) =『「情報」そのものを商品化する産業へ』(1.1.3)と変貌していること、そのさま。
この段落1では、「情報の商品化」(1.2.1)そのものについて語ろうとしているわけではなく、 際立って現代的な「情報の商品化」(1.2.1)に、実は、大昔から存在した「資本主義という経済機構の秘密」(1.2.2)が潜んでいるとしているのです。解読、少しやっかい ! 「資本主義」「経済」制度とか、いま一つの人は、「『マルジャーナの知恵』(岩井克人)もっと深くへ ! 」(こちらへ)に戻ってみて。
この段落は一言でいうと、現代資本主義は、従来の製造業から情報産業へと中心を移行しつつあり、その経済メカニズムの本質は歴史的に変わらないものであることを、『アリババと四十人の盗賊』のマルジャーナの知恵に例えて説明しよう、というになります。😄
「2」は略
3
この段落は一言でいうと、「差異」こそが情報の本質であり、そのことを理解した最初の人物が『アリババと四十人の盗賊』のマルジャーナであるということが、物語を通じて示されている、ということになります。😙
4
💥設問💥
①(4.1.1)情報の商品化―― aそれは、したがって、差異の商品化と言いかえることができることになる。(4.1.2)すなわち、差異そのものを売ることによって利潤を得る―― bそれが、現代の資本主義の中心原理として機能しているのである。
⇒
b ⇒解答例 差異そのものを売ることによって利潤を得る(こと)
↑ ↑ ↑
差異を利用して間接的に利益を生み出すのではなく、差異を本質とする情報を売る、そのことによって利益を獲得しているとしているのです。
②(4段落.2段) ところで、資本主義とは、資本の無限の増殖を目的としている経済機構にほかならない。資本の増殖のためには利潤が必要である。そして、利潤とはつねに差異から生まれる。なぜならば、安く買って高く売ることこそ利潤を生みだす唯一の方法であり、cそれは、詐欺や強奪といった手段に訴えないかぎり、二つの異なった価値体系のあいだのd差異を媒介することによってしか可能ではないからである。
cそれ(4.2.4)が指示するのは
⇒
d差異を媒介するとは、どのようなことを言うのか、わかりやすく言い換えなさい。
⇒
②c⇒解答例 安く買って高く売ることによって利潤を生みだすこと
↑ ↑ ↑
資本主義は「資本の無限の増殖」(4.2.1)を目的としている。増殖するには利潤が必要だ。利潤を得るには、「安く買って高く売る」(4.2.4)しかない。「安く買って高く売る」には、「二つの異なった価値体系の間の差異」(4.2.4)を利用するしかない、という論理です。次(4.3.1以降)に、『「二つの異なった価値体系の間の差異」を利用する』とはどういうことかが論じられていくのです。
d解答例 二つの価値体系に立って、両者のあいだに存在する違いを取り持つこと。
③(4段落.3段) 差異から利潤を創りだす――これが、資本主義の基本原理である。だが同時に、この原理は、eいままでの資本主義においては、あるいは外部的な関係として、あるいは隠された構造としてしか作用してこなかった。たとえば、資本主義のもっとも古い形態である商業資本主義とは、海を隔てた遠隔地との交易を媒介して、国内市場の価格との差異から利潤を生みだしてきた。また、産業革命以降の資本主義の支配的な形態であった産業資本主義は、いまだ資本主義化していない農村における過剰人口の存在によって構造的に創りだされた、労働力の価値(実質賃金率)と労働の生産物の価値(労働生産性)とのあいだの差異から利潤を生みだしてきた。
eいままでの資本主義(4.3.2)とは、具体的には何か、13字で記しなさい。
⇒
③e ⇒解答例 商業資本主義と産業資本主義
↑ ↑ ↑
とても難解な箇所。直前の『「二つの異なった価値体系の間の差異」(4.2.4)を利用する』とはどういうことかが述べられています。
特に接続語を次のように(=ピンク文字)に言い換えて💥解読💥すると、論旨がすっきりと入ってくると思います。
→「いままでの資本主義においては、あるいは(=一つは)外部的な関係、あるいは(=もう一つは)隠された構造としてしか作用してこなかった。たとえば(=具体的には)、資本主義のもっとも古い形態である商業資本主義とは、海を隔てた遠隔地との交易を媒介して、国内市場の価格との差異から利潤を生みだしてきた。また(=もう一つは)、産業革命以降の資本主義の支配的な形態であった産業資本主義 は、いまだ資本主義化していない農村における過剰人口の存在によって構造的に創りだされた、労働力の価値(実質賃金率)と労働の生産物の価値(労働生産性)とのあいだの差異から利潤を生みだしてきた。」ととらえられます。
↓ ↓ ↓
骨格だけにすると
↓ ↓ ↓
『「いままでの資本主義」を、あるいは(=一つは)外部的な関係として、あるいは(=もう一つは)隠された構造としていて、次に、たとえば(=具体的には)、『……………… 商業資本主義は、差異から利潤を生みだしてきた。また(=もう一つは)、………産業資本主義は、………差異から利潤を生みだしてきた。』と述べる展開になっています。
↓ ↓ ↓
できるだけわかりやすく組み立てなおすと
↓ ↓ ↓
商業資本主義⇒「差異から利潤を創りだす」(4.3.1)原理が、「外部的な関係として作用」(4.3.2)してきたとしています。具体的には、「遠隔地(=安く買える地域・国)と…国内(=高く売れる地域・国)市場の価格の差異を媒介して利潤を得る」(4.3.3)(=安い所から買ってきて、利益の出る値段で売る)という、利潤が得られるからくり(「外部的な関係」)が見えやすいと暗に言っているのです。
産業資本主義⇒「差異から利潤を創りだす」(4.3.1)原理が、「隠された構造として作用」(4.3.1)するとしています。具体的には、「農村における過剰人口」(4.3.4)を利用して、労働力の価値と生産物の価値の差異から利潤を得る、つまり、利潤が得られるからくりを「隠された構造」と表現して、「安い所から買ってきて、利益の出る値段で売る」構造であるのだが、それが見えにくいとしているのです。(利潤を上げるため、また、競争に勝つために労働者の賃金はできる限り下げたい=搾取が資本主義の本質だということをほのめかしているのです。)
よって、「今までの資本主義」は「商業資本主義と産業資本主義」の2つとされていることが分かるので。
💥設問💥
④(4段落.4段) だが、f遠隔地も農村の過剰人口も失いつつある現代の資本主義は、もはや商業資本主義的な差異からも産業資本主義的な差異からも利潤を生みだすことが困難になってしまっている。資本主義が資本主義であり続けるためには、いまや差異そのものを意識的に創りだしていかなければならないのである。そして、それが、情報の商品化を機軸として、われわれの目の前で進行しつつある高度情報社会、脱工業化社会、あるいはポスト産業資本主義と呼ばれる事態にほかならない。
f遠隔地も農村の過剰人口も失いつつある現代の資本主義は、もはや商業資本主義的な差異からも産業資本主義的な差異からも利潤を生みだすことが困難になってしまっている(4.4.1)と言える理由を、本文の内容をふまえ、かつ、歴史や時事の知識にもとづいて考えられることを、「商業資本主義」「産業資本主義」それぞれについてわかりやすく論述してみましょう。
⇒
④f⇒解答例 現代は先進国が植民地を失ってしまったり、先進国と途上国の経済格差が縮小したりして、植民地や途上国で産物や製品を安価で買って、それを高価で売れる先進国などの地域で売って利潤を得るという「商業資本主義」のビジネスモデルが難しくなりつつあるから。
また、世界規模の近代化工業化によって「農村の過剰人口」を失いつつあるので、農村の過剰な人々を安い賃金で雇用して利潤を得るという「産業資本主義」のビジネスモデルが難しくなりつつあるから。
(戦前、日本が人種差別撤廃を国際連盟で提唱(⇒
こちら)したり、アジアの欧米による植民地支配からの解放を唱えた(⇒
こちら)ことが、欧米が植民地を失うことの一因であったのです。また、欧米の資本は、労働力と市場を求め東はチャイナ周辺まで、西はアメリカ西海岸まで拡張していったが、もはやそのような拡張する余地はなくなったとされています。よって、新しいタイプの資本主義に変化(⇒
こちら)したともされています。難しいけど、もっと、深くへ ! )
💥設問💥
⑤ 情報の商品化――それは、まさに差異が利潤を創りだすという資本主義の基本原理そのものを体現している現象である。いわばそれは、もはやだれも聞きのがしようのない、g資本主義の秘密にかんする「開け、胡麻」であるのである。(4段落.5段)
g資本主義の秘密にかんする「開け、胡麻」である(4.5.2)とはどういうことの比喩になっているのか、説明してみよう。
⇒
⑤g⇒解答例 「情報の商品化」という現象は、差異を媒介することで利潤を生みだすという、資本主義が持つ不変の性質を解明する重要なカギになるということ。
↑ ↑ ↑
主語は「それ」、「それ」が指示するのは直前の「情報の商品化」。「開け、胡麻」は、アリババの話で出てくる財宝の隠された洞窟を開けることができる呪文で、ここでは、資本主義の見えにくい本質を解き明かすカギとなることの暗喩になっている。
1で、 際立って現代的な「情報の商品化」(1.2.1)に、実は、大昔から存在した「資本主義とい経済機構の秘密」(1.2.2)が潜んでいるとしているとされている意味が理解出来ましたか。
タイトルに「初心者におすすめのランニングシューズ」とした、あるサイトの画像。消費者に選んでもらえるように、メーカーはさまざまな観点から〈差異〉を創りだしています。
この段落を要約⇒現代の資本主義は情報の商品化、すなわち、差異の商品化を通じて利潤を生み出している。そもそも資本主義の基本原理は 差異から利潤を創り出す ! ことにある。歴史的に見ると、商業資本主義は遠隔地との交易による価格の差異から利潤を得てきた一方、産業資本主義は農村の過剰人口による労働力と生産物の価値の差異から利潤を得てきた。 however、現代では遠隔地も農村の過剰人口も減少し、これらの差異から利潤を得ることが困難になっている。そこで、資本主義は差異そのものを意識的に創り出す必要に迫られており、これが高度情報社会、脱工業化社会、またはポスト産業資本主義と呼ばれる現象の根底にある。情報の商品化は差異が利潤を創り出す ! という資本主義の基本原理を体現しており、資本主義の秘密を明らかにする重要な現象である。情報の商品化は、差異を売ることで利潤を得る手段として機能し、資本の無限増殖を目指す資本主義の中心原理として作用している。😖💦
資本主義を批判する団体の、1911年の
世界産業労働組合によるポスター『資本主義的システムの
ピラミッド構造(
Pyramid of Capitalist System)』。最上層には金袋が置かれ、各層の文字は上から英語とフランス語で「資本主義」「我々はあなたを支配する」「我々はあなたを愚かにする」「我々はあなたを撃つ」「我々はあなたのために食べる」「我々は全員のために働く、我々は全員を養う」。最下層では
赤旗が振られている。「マルジャーナの知恵」の筆者の岩井克人さんの立つスタンス。左派はどういう考え方をするのか知っておくといいと思います。
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