ホンモノのお金の作り方(岩井克人)もっと深くへ !

 


 「おカネ」とは 

 「おカネ」は、貨幣とか通貨ともよばれますよね。金融広報中央委員会は次のように説明しています。

 貨幣には3つの機能(価値尺度、交換・流通手段、価値貯蔵手段)がある。これに対して通貨とは、流通する貨幣という意味があり、貨幣の交換や流通の手段としての機能を強調するときに使われることが多い。

 その「おカネ」を「交換や流通の手段としての機能」を忘れて、蓄(たくわ)え増やすことを目的にしてしまうことがあります。とにかくお金が欲しい、お金持ちになりたいなどと考えることがありますよね?そういうこと、マルクスが「貨幣の物神化物神崇拝)」(こちらを)といい、「おカネ」という人間が作り出したものに支配されることを指摘したということも知っていてよいでしょう。左派の人たちが好んで使います。

 以下、筆者の論理をまとめました。


 ホンモノのおカネの作り方は 

 ニセガネを作らないこと。そのためには、ホンモノのおカネに似せないこと。そういう逆説的な結論になる、とちょっとひょうし抜けするような結論ですね。さらに、お金の歴史をさかのぼり、筆者の最終結論に至ろうとします。


 江戸時代の二項対立となる例 

佐土原藩     = ニセガネを作った

        vs.

天王寺屋・鴻池屋 = 「預かり手形」を発行した

 「天王寺屋・鴻池屋」の「預かり手形」が金貨・銀貨の「代わ」の支払い手段として通用し始めた。つまり、ホンモノ(金貨・銀貨)に「代わって」それ自身(預かり手形)がホンモノのおカネになってしまったというです。


 続いて、「お金」というものの歴史をもう少し詳しくみると、次のようになると述べられています。

 おカネの歴史 

金・銀にその内容量が表示されていた。

    ↓

②一定の価値にあわせて金・銀の量を決めたので、いわゆる金貨金・銀代わり)として流通するようになった。

    ↓

③金貨の預かり証書預かり手形=金貨代わり)が制度化されて銀行券預かり手形=金貨代わり)になった。

    ↓

小切手クレジットカード銀行券代わり)のように簡便なものが通用するようになった。

 そうすると、「ホンモノのお金」の「ホンモノ」とはどういうものになるのか?


 ホンモノとは 

 ホンモノとはその時の「代わり」の元になるものという意味で、その元になるものも以前は「代わり」にすぎなかった。こうして、次々と「代わり」がホンモノになっていった。

 ニセガネ作りは、ホンモノが確実に存在するという「ホンモノの形而上学の哀れな犠牲者」である。


 結論 

 ホンモノに似せるのではなく、代わってしまうのが、ホンモノのおカネの作り方の極意となる。もちろん、代わりを作るには 大きな資力と厳重な金蔵(*)が必要である。それらがない者は、ホンモノのおカネの作り方を科学するしかない。言い換えると、ホンモノのお金を作るには、今ホンモノとして流通しているお金に取って代わるものを作ればよいが、それを実現するのはとてつもなく非現実なことで、そうであるのなら、できるのは、お金とはどういうものか(本質)を考えることだと言っているわけです。

 本文「ホンモノのお金の作り方」は、文字通り「ホンモノのお金」は私にも作れるのかな…という興味を抱かせながら? 冒頭に述べた貨幣・通貨の本質を論じているのであり、それがこの文章の真の目的であったわけです。

大きな資力と厳重な金蔵(*)… 次のようなことの比喩的表現。日本は偽造防止技術は世界トップと言われること。世界3位の経済力。日本政府の財政・金融政策への信用、日本の通貨は国内だけではなく世界中で信任されいること。信用されていない政府が発行するお金、自国民からさえそっぽを向かれています。ビットコイン(こちらを)が注目されていますが、国や中央銀行によって発行・管理されている従来のお金とは本質的に異なるものですが、今後従来の通貨にとって代わる時代が訪れるのでしょうか?

 ちょっとわかりにくいけど、今一つという人、本文+「もっと、深く ! 」もう一度たどってみてください。

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ホンモノのお金の作り方 解答/解説
問1 ここでは「金貨や銀貨」の「偽造」についてではなく、「ホンモノのおカネの作り方」について述べるのが本題なので。


問2① 預り手形を両替屋に持っていけばだれでもその表に書いている金貨や銀貨を受け取ることができたこと。

  ② 「預り手形」は、それといつでも引き換えられる金貨銀貨の「代わり」として、あたかもそれ自身が借金の支払い手段であるかのようにも用いられることになったこと。

  ③ 実際の金貨や銀貨を用いるよりも、この持ち運びも保管も容易な「預り手形」を用いたほうが日々の商売にとってはるかに便利であったこと。


問3(1)金銀

  (2)銀行券
(金銀→金貨銀貨→銀行券→小切手・クレジットカード。ホンモノ(前者)の代わり(後者)がホンモノとして流通していくことを「逆説」とも言われています。「逆説」とは、「貧しき者は幸いである」〈聖書の言葉〉のように、一般的な真理に反する説の意、ここでは、「代わり」は「代わり」でありホンモノであるはずがないという一般的理屈に対して、元は「代わり」が「ホンモノ」になるという理屈を表したもの。)

問4 

問5 擬人法

問6 a   b   c 返済  d 交易  e 子孫末孫

a.Q1 金貨銀貨に表示されたものが、実際の内容量としては関係なく、価値を担っているということ。

a.Q2 ホンモノが確実に存在するという認識であったということ。 (27字)




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