「である」ことと「する」こと (丸山真男)1/2 もっと深くへ !


1/2を要約

 権利を行使しないと権利を喪失することになることと同じように、自由や民主主義も現実に日々行使するすることで初めて保持できる。ものそれ自体に価値があるという「である」論理・価値から、現実的な機能・価値の考え方へ移行するのが近代化である。しかしその移行は自動的に行われるわけではない。


 この文章、長い間高校国語教科書に採られてきましたが、すごく違和感を感じます。「権威」に惑わされずに冷静に読み解いてほしいと思います。

 



違和感

 日本国憲法の第十二条の「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない」について、「努力によって、これを保持」するを、巧みに、「現実に日々」「行使」することだとすり替えているように思います。この第十二条の後半には「又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。」とあるのを、丸山さんは意図的に無視しているように見えます。自由や権利の主張と行使が、責任や義務を果たすことと表裏一体の関係であるという「市民」常識を見ないふりをしているのではないでしょうか…?そして日常生活では政治方面に関心が薄い人たちを「アームチェア」に安楽に寄りかかっているのと同じだと批判しています。でも、本当に政治を動かしていくのはそういう人たちの声なき声であり、願望であるということもできるのです。また、自由や民主主義は現実に日々行使することを怠ると、「ヒットラーの権力掌握」と「同じ道程」をを辿ることになると「警告」がなされていますが、「ヒットラーの権力掌握」は合法的になされたのであって、ドイツ国民が自由や権利の行使を怠ったからというのも事実とは違ってるのでは…


 アメリカを例に挙げて、日本の後進性を主張するのも進歩派言論人のやり方。アメリカ映画の題名は何で、どういう文脈でのどういう場面のなのか…?アメリカでも日本でも、上司や親や年配者を、その作法は異なるがレスペクトして立てるのは変わらない。それを封建的=後進性と決め付けられるのか。筆者の東大の教え子たちは、学外では筆者に「丸山君」「丸山さん」と呼びかけ「普通の市民」に対するように話したり振舞っていたのでしょうか…?


 「徳川時代」は丸山さんの専門の領域だが、今ではステレオタイプのとらえ方に思えます。士・農・工・商という身分制度の建前の裏側にあった、単純に二分法ではとらえられない実態(例えば、士は支配層であるが、その他は職業の区部をしているなど)が明らかにされています。この文章が書かれ時代とは違って、現在では「ヒットラーの権力掌握」や江戸時代の身分制度の実態など手軽に読むことができるし、ネットでも知ることができるようになりました。


 丸山真男さん、戦後思想家知識人の巨星であり(例えばこちらを参照ください)、こんな言い方はおこがましいが、全体的に事実のすり替え、巧みな論理の誤魔化しがあるように思います。


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「である」ことと「する」こと  1/2  問題解答(解説)

問1 a催促  b c空疎 e対照 f秩序 g h事理 dハムレット

問2 権利の上に眠る者 

(8字。ここでは、貸した金を返してくれと言えない人という意味で「気の弱い善人の貸し手」と言われている。)

問3 日本国憲法第十二条

(9字。同文の「対応しておりまして」の主語でもある。)

問4 時効

(『基本的人権が「人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果」である』と、「先ほど」=(前段)話題にしたこと=「時効」と「著しく共通する精神」があること。)

問5 物事の判断を他人に預け、自由や権利を積極的に行使することを忘れ、毎日を安穏に暮らせればいいと思っている人。

(自由を「祝福する」ことの意味を、「生活の惰性を好む者」とかなり無理に言い換え、さらには、「毎日の生活さえなんとか安全に過ごせたら、物事の判断などは人に預けてもいいと思っている人」と見下し、「アームチェアから立ち上がるよりもそれに深々と寄りかかっていたい気性の持ち主」と次第に否定的なニュアンスを強くする言い方をして、自由や権利の「行使」することの重要性を強く印象付け、自由や権利などの政治的事柄に関心がないことを否定しているわけです。)

問6 自分自身の中に巣食う偏見 (12字)

(この段は、【「自由人」】と【「偏見から…自由でない」人(不自由人…?)】の二項対立で組み立てられているととらえます。よって、「とらわれている」のは「自分の中に巣食う偏見」に、ということになります。)

問7 食べるか否かの行為に関係なく、美味とか不味いとか決め込む

(「プディングの味は食べてみなければわからない。」と対照となる内容。)

問8 権力関係やモラルが何であるかに基づいて判断される徳川時代のような社会。

(ここでは、前文の「こうした社会」と同内容。おおまかには徳川時代のような社会。どういう社会だととらえられているかは前段にもどる。「…権力関係もモラルも、一般的なものの考え方の上でも、何をするかということよりも、何であるかということが価値判断の重要な基準となる」に着目してまとめる。)

問9 徳川時代のような社会

問10 勤務時間内は上下関係にあるが、勤務時間外では普通の市民関係に変わる関係。

(直前の「勤務時間が終わった瞬間に社長と社員あるいはタイピストとの命令服従関係が普通の市民関係に一変する」に着目。)

a.Q 

 解答例…国民が主権者であることに安住していた例。


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